時局便乗にはあらず

 先日の図書館でティモシー・スナイダーの「秘密の戦争」を借りることが

できました。ティモシー・スナイダーの出世作なのだそうですが、翻訳がでた

のは昨年のことになりです。

 これは昨年暮れに一度図書館から借りていたのですが、そのときはほとんど

読むことはできずに返却したようであります。そのときにも、この場で話題に

しておりました。

vzf12576.hatenablog.com  本日にこの本を手にして見ましたら、表紙をめくったら、すぐにおかれている

「東ヨーロッパ 1914年」の地図に添えられた「地名について」という訳注

に、次のようにありです。

「原則として地名は原著の地図における表記を採用し、( )内に本書で主に使

用される表記を示した。『ポ』はポーランド語、『ウ』はウクライナ語、『リ』

リトアニア語での表記を指す。なお、『キエフ』の表記は例外としており、

『表記について』の訳注を参照されたい。」

 1914年でありますので、世界大戦が始まった頃の地図で、この時代は帝国

に囲まれてポーランドウクライナがあったことです。そのあとはその後継の国

に両国ともに飲み込まれてしまうことになったわけです。

 訳注では「キエフ」だけは例外としているわけですが、これは「キエフ」とい

う地名が、それだけ浸透していたからでありましょうか。

 それじゃ「表記について」ではどのように書かれているかですね。

「地名は言語によって異なる名称を持つ。Kyivについて、本書で著者は意図的に

Kyivの綴りを使っており、訳出にあたっては『キーイウ』と表記するのが正し

いが、これについても日本で一般に使用されている『キエフ』の表記を使用した。」

 ウクライナ語で表記しようとしまして文字がないものですから「Kyiv」と英文字

を使うことになりましたが、時代と場所によって、ウクライナの言葉は揺れるので

ありまして、ホロコースト史が専門のティモシー・スナイダーは、このところの

地名にこだわっていたことが、この訳注からもわかることであります。