「お守り」というと何を思いだすでしょう。当方は学生の頃に知った山川方夫
さんの短編小説のことが頭に浮かんできました。どういう意味合いで主人公は
お守りを必要としたのであるかですが、先日の読売読書欄には「コロナ禍を生き
抜くための『お守り』ということで、紹介されているものがありました。
紹介しているのは、読書委員の栩木伸明(とちぎのぶあき)さんで、栩木さんが
あげていますのは、詩人 辻征夫さんの「船出」という詩集です。
コロナ禍でなぜ詩を読む必要があるのかということで、栩木さんは三つ理由を
あげています。
・僕たちが生きているコロナ禍のメタファー(隠喩)として読むことができる
・現代の言葉が汚れてアビューズ(虐待)されていると感じる
・私たちがもう一度言葉への信頼を取り戻すための希望を託すため
こうした理由から選ばれた詩集が辻征夫さんのものとなるのでした。
ここで辻征夫さんの詩集があがってくるとは、意外でありました。
意外と思うのは、当方がよく分かっていないからでありまして、当方がこれ
までに記録してきたブログには、小沢信男さんを通じての辻征夫さんのこと
があちこちに姿をあらわしているのですが、ほんとに分かっていない。
vzf12576.hatenablog.com 栩木さんは「船出」をあげていますが、辻さんの詩集は岩波文庫にも入って
おりまして、こちらは谷川俊太郎編となっています。
2000年に60歳で亡くなってしまった辻さんのことは、「ゴーシュの肖像」
からの付き合いでありまして、岩波文庫に入る人とは、その時は思ってもいません
でした。
まして、コロナ禍にお守りかわりにといわれるとはです。
たまたま岩波文庫版「辻征夫詩集」は、このブログを打ち込んでいるビューロー
の上に背表紙が見えていて、なんとも神棚にあがっている本のようにも思えまし
た。
今回の読売読書の栩木伸明さんには、感謝しなくてはです。