通り過ぎた人々

 本日の朝刊コラム「折々の言葉」鷲田清一さんは、小沢信男さんの文章を

取り上げていますよと、ぐんまさんに教えていただきました。これはありが

たいことでありまして、早速に紙面でかくにんすることになりです。

 鷲田さんは小沢さんが「捨身な人」に収録している「辻征夫」さんについて

の文章から、「生涯おのれを蹴りとばしつづけたような男だった。」という

一節を引用し、紹介しています。

 さて、これはどのようなタイトルの文章にあったのだろうと、「捨身なひと」

を手にとってみることです。

 「捨身なひと」が刊行された時にも話題しておりますが、これは小沢さんが

敬愛する先輩(花田清輝中野重治長谷川四郎菅原克己)と辻征夫さんに

ついての文章を集めたものとなります。

 辻征夫さんについては四本の文章がありまして、鷲田さんが取り上げたのは、

その最初に置かれた「貨物船句集 跋」2001年のものでした。

当方は、これを初出で目にしているのですが、スルッと読んでしまっていて、

ほとんど何も、自分の中に残っていませんでした。今から二十年前のことで

ありまして、ちょっとまだ青かったかなです。(当方と小沢さんは二回り上の

兎年でありまして、辻さんについて書いていた頃の小沢さんの年齢に近づいて

きましたです。)

 辻征夫さんは、余白句会を通じてのお仲間でありまして、小沢さんよりも

年少ではありますが、心通う人で、深く信頼を寄せていた方でした。若くし

て難病のために亡くなったのですが、当方は小沢さんを通じて辻征夫さんの

存在を知ることになりました。

 それこそ、小沢さんの中では花田、中野、長谷川という新日本文学の大御

所と並んで、名前が上がるのですから、推して知るべしです。

 行きつけのとしょかんの企画「あなたもブックディレクター」は、今週末

からのスタートということになりますが、当方は小沢信男さんの「通り過ぎ

た人々」に登場する人を中心に選書をしようと思っているのですが、そう

いえば辻征夫さんも「通りすぎた人」のお一人でありました。