大泉といえば

 大泉というと、当方の住んでいる町では、明治から続く旧家(北海道の

内陸部には明治以前から住み続けている和人は、めったにないのでありま

すね)がありまして、小さな町でありますので、身近に大泉という人がい

ましたら、あの旧家とご親戚ですかと問うことになりです。

 これが1995年を過ぎた頃に、北海道の若い人気者で大泉姓の方が登場し、

それからは大泉と聞きますと、まさかあの大泉と関係はないでしょうねと

なるのです。たぶん、日本のどこにいっても人気者の大泉さんは知名度

高いので、今では北海道からきた大泉ですといったなら、あの大泉さんと

関係ありですかと聞かれるのでしょうね。(山形でしたら、大泉逸郎さん

かもしれませんが)

 もちろん、人気者の大泉さんが登場する前にも、大泉滉(あきら)さん

という、嫌われキャラの俳優さんがいました。風采が上がらない上に感じ

が良くないのですから、とても人気者にはならなかったのですが、存在に

奇妙な毒があって、古くからの映画ファンなどは、大泉というとこちらの

方を思い浮かべる人もいるでしょう。

 人気者の大泉さんが全国放送の番組に出演するようになったのが1999年

で、嫌われキャラの大泉さんが亡くなったは、その前年の1998年でありま

した。

 今では大泉滉さんのことを知る人も少なくなっているでしょう。

 このようなことを話題にするのは、「図書」8月号から始まった四方田

犬彦さんの「大泉黒石 虚言の文学者」を読んだからであります。

大泉黒石は今日、あらゆる日本文学史から排除されている。相当の文学

通でないかぎり、その名前を記憶している人はいないだろう。

1960年代末から70年代にかけて、夢野久作久生十蘭、また小栗虫太郎

国枝史郎といった、それまで正統的な文学史では無視されてきた作家たち

が次々と復権した時にも、なぜか黒石だけはほとんど話題にならなかった。

没後30年にあたり、1980年代後半には緑書房を発売元として全集が刊行

された。もっとも残念なことに第一期で終わってしまい、収録されなかっ

た作品は少なくない。」

 ということで、四方田さんは忘れられた作家 大泉黒石さんの作品世界

の解明をして行こうというのですが、この先どのようになっていくので

しょう。

 嫌われキャラの大泉滉さんは、この黒石さんの息子にあたる人で、滉さん

が存命中には、あの人の父親はなにやら変わった人であったようだよといわ

れていました。

 もちろん、当方は大泉黒石さんの作品を読んだことはなしであります。

俺の自叙伝

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