小沢信男著作 206

 小沢信男さんが2001年に受賞された「桑原武夫学芸賞」というのは、かなり地味な賞
であるようです。文芸関係の賞で一番話題となるのは「芥川賞」とか「直木賞」であり
ますが、あれはどちらも新人賞的な色彩のもので、これから売りだすぞという人に与え
るものですし、大御所が受ける文芸関係のものはいずれもスポンサー出版社とつながり
の深い作家等にいったりしているといわれていますからね。
 桑原武夫学芸賞というのを検索しますとウィキペディアには、以下のようにあります。
桑原武夫学芸賞(くわばらたけおがくげいしょう)は、桑原武夫(仏文学者)を記念
した潮出版社主催の学術賞である。対象は人文科学の優秀な書籍である。1998年に創設
された。受賞作は毎年5月に発表され授賞式は7月に京都ホテルオークラで行われる。
賞金は100万円。略称は『桑原武夫賞』、『桑原賞』。」
 この賞の選考委員は、いずれも京都大学や京都にゆかりの人がつとめています。
梅原猛(哲学者)  鶴見俊輔(哲学者) 河合隼雄(第1回から第9回。心理学者)
多田道太郎(第1回から第8回。仏文学者) 山田慶児(第10回から。科学史家)
杉本秀太郎(第11回から。仏文学者)
 現在までの受賞一覧です。
1 1998 長田弘(詩人)           記憶のつくり方
2 1999 村上春樹(小説家、米文学翻訳家) 約束された場所で
3 2000 鷲田清一(哲学者。阪大文学部) 「聴く」ことの力 臨床哲学試論
4 2001 小沢信男(小説家)      裸の大将一代記 山下清の見た夢
5 2002 池内紀(独文学者、随想家)  ゲーテさんこんばんは
6 2003 川本三郎(批評家)      林芙美子の昭和
7 2004 加藤典洋(文芸批評家。明治学院大国際学部)『テクストから遠く離れて』
8 2005 池澤夏樹(小説家、詩人)   パレオマニア 大英博物館からの13の旅
8 2005 猪木武徳(経済学者。日文研) 文芸にあらわれた日本の近代  
9 2006 中沢新一(思想家。多摩美大) アースダイバー
10 2007 井波律子(中国文学。日文研トリックスターの群像
11 2008 四方田犬彦比較文化研究。明治学院大)『日本のマラーノ文学 』
12 2009 茂木健一郎脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研)
12 2009 平林敏彦(詩人) 戦中戦後 詩的時代の証言1935-1995
13 2010 坪内稔典俳人。佛教大) モーロク俳句ますます盛ん 俳句百年の遊び
14 2011 後藤正治(ノンフィクション作家) 清冽 詩人茨木のり子の肖像
 どうでしょうか、この受賞者の一覧は、スポンサーは潮出版社でありますが、特に
強い色を感じないのでありますね。ちょっと関西系の人が多いかもしれませんが、
むしろここに取り上げられている人たちを表彰するようなしかけがなかったのほうが、
不思議であったようにも思えます。
 小沢信男さんが受賞したのは第4回ですが、今となってはノーベル文学賞の有力候補
と阪大学長となった方の、あとに受けたとなります。