四方田犬彦さんは、ほかにどのような本をあげているか気になることでありましょう。
これがまたまた渋いことでありまして、次の解説でありました。
解説 尹学順 高井有一著「立原正秋」 新潮文庫
四方田犬彦さんが「立原正秋」さんについての高井有一さんの本を手にするというの
は、高井有一さんへの興味よりも、立原さんに関する関心からであることは明白であり
ます。
- 作者: 高井有一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/12
- メディア: 文庫
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いうと、古風な文士の趣ある高井さんへの関心からでありました。
四方田さんのコメントは、次のようなものです。
「立原の出自をめぐって彼と故郷をともにする解説者が、立原の出自をめぐって立原の
自己目的化に疑義を呈しているところがスリリングである。この解説をもってようやく
この名著が完結したという印象あり。隠された出自という文学的主題をめぐる、愛情に満
ちたエッセイだと信じます。」
元版ではなく、文庫になって解説を添えられて、これが完結というのでありますからし
て、これはどこかで手にしてみたいと思わせます。
さて、もう一冊はです。これは、当方はまったく未知の本であります。作者はアニメ
作家として著名な方であると知ったのは、数年前のことであったように思います。
解説 山田正紀 押井守 「獣たちの夜」角川ホラー文庫
獣たちの夜―BLOOD THE LAST VAMPIRE (角川ホラー文庫)
- 作者: 押井守,寺田克也
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/07/10
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コメントがであります。
「『獣たちの夜』は、いかに江藤淳が1970年代初頭に年少の世代を舐めていたかという
突然の批判から語り起こされ、この思弁的魅力に満ちた荒唐無稽な怪奇小説を、みごとに
時代の文脈のなかで論じている。お茶を濁して、作者との交遊録でも書いておけばいいと
ころを、文芸批評として正統的な切り口で大上段から論が展開してゆく。押井はこんな風
に論じられ、実によかったなあという気持ちがする。」
四方田さんは、当方よりも何歳か年下で、押井さんは当方と同年生まれ、山田さんは
当方よりも一年年長であります。
当方がものごごろついたときには、江藤淳は文壇保守の論客となっていて、進歩的文化
人への疑問を呈していたものです。あとはなんとなくエリートであることを鼻にかける
ような雰囲気を感じて、否定すべき存在の代表の一人でありました。
なんとなく、当方が感じていたような江藤淳像につながるものを、この「獣たちの夜」
の解説はとりあげているのではないかと、期待してしまいました。