もう一冊いかがですか

 図書館で本を借りようとしましたら、カウンターには「もう一冊いかがですか」

掲示されているのが眼に入ります。あと一冊借りたら、司書の女性のおぼえ

めでたくなるのかなと思って、読めそうもないのに追加で借りてしまったりです。

本の貸出冊数というのは、別に図書館の評価の指標にはならないと思うのだ

けど、現実にはあちこちの図書館は、貸出冊数の実績をあげようとして努力をし

ています。だからといって、実用書とリクエストの多い本ばかりを購入してもいけ

ませんですね。

 ということで、本日のもう一冊本となります。

 これはとっても読めないよと思いながら、手にしてぱらぱらと見ていて驚いた

のですよ。

20世紀ロシア文化全史: 政治と芸術の十字路で

20世紀ロシア文化全史: 政治と芸術の十字路で

 

 二段組で350ページほどですから、この一冊だけを読んでいても何ヶ月もかか

りそうな感じです。

 それほどロシア文化には関心もないしなと思いつつも、目次を見ましたら、それ

こそキラ星のごとくのスターが登場であります。

 とりあえず、「ノーベル賞を辞退」というパステルナークについて書いているとこ

ろだけでも読んでみることにしましょう。

ノーベル文学賞は、西側による社会主義文化に対する最も高いレベルの承認で

あると同時に帝国主義的な文化的侵略の象徴でもあり、・・・白系ロシア人亡命者

のイワン・ブーニンが受賞してから、ソビエト指導部の脅迫観念となっていた。」

 今も昔もであります。ブーニンノーベル文学賞の候補にあがっているのを知っ

た指導部は、スウェーデンに対して「受賞したら政治的に不愉快な事態になる」と

脅したのだそうです。

 どこかで聞いた話でありますが、これは人民共和国の知識人がノーベル平和賞

を受けた時のことを思い起こさせるのですね。やはり、この時も、あらゆるチャンネル

を通じて、政府に圧力をかけたのでありましょうか。(平和賞ですからノルウェーか)

 これを借りてみようと思ったのは、この翻訳者の経歴をみてびっくりしたからで

あります。なんと外交官(佐藤優さんとおなじ外務省のロシアスクールですが、こち

らの今村さんは、たぶん上級職でしょう。いまはカナダの大使館で公使を勤めて

いるようです。)とのこと。

 巻末の解説を書いている沼野充義さんは、次のように記しています。

「現職の多忙な外交官がこのような大部の本を丁寧に翻訳し、詳細な訳注までつ

けるという作業を行うのは、ヒマな大学教師には想像できないくらい大変な仕事で

はなかったのかと思う。しかし、文化交流において外交官が果たすべき役割はもと

もと非常に大きい。」

 そういえば、その昔にスペイン文学を紹介、翻訳していた方も外交官でありました

ですね。

 それにしても、このような人たちは、いったいいつ眠っているのだろうか。