チャトウィン伝の前に

  本日の新聞夕刊を見ましたら「惜別」というページに高儀進さんの名前を

見つけました。

 このページは、最近に亡くなった人を記者が追悼する文章を寄せるのであり

ますが、ということは高儀進さんは亡くなったということですか。当方は訃報

記事を見逃しておりました。(訃報は掲載されていたのかな。)

 記事の中には、「昨年秋に末期がんの告知を受けた」とありました。亡く

なったのは、今年の8月4日ということです。そうなのか、それはまったく知り

ませんでした。

 一ヶ月ほど前に、今年のノーベル文学賞を話題とした時に、当方が思うこの

文学賞にふさわしい作家として、ディビッド・ロッジとジョン・バースの名前を

あげているのですが、もちろん、どうらの作家も翻訳で読んでいるのですが、

とりわけ日本でディビッド・ロッジが読まれているとすれば、それはとりもなお

さず高儀進さんの翻訳のおかげでありますよね。

 これまでディビッド・ロッジの小説作品はほとんどが高儀さんの翻訳で刊行

されているのですが、それこそ版元は白水ではなく他社のこともありましたが、

翻訳はかわらずでありました。

 高儀さんは他の作家さんの作品も翻訳しているのですが、こだわりは「定評

ある訳があるものを訳すより、新しい作品を世に紹介すること」だったそうで

す。

 この「惜別」を書いているのは編集委員「三浦俊章」さんでありまして、

三浦さんも次のように書いています。

「小説で最もひかれたのは、現代英国きってのコミック小説の名手ディビッド・

ロッジの作品だった。『交換教授』など大学を舞台にしたキャンパス・ノベルは

笑い転げたあとに人間とは何かを考えさせる深いメッセージが含まれていた。」

 当方は笑うだけで終わってしまっているのですが、それでもそうした笑いを

求めて次から次へと買っては積み上げていたのです。たぶん、まだいくつかの

作品は購入して未読でありましょう。まずはそれをすこしずつ読まなくては。

 ちなみに刊行されたロッジの本で、最後のものは昨年の年明けにでた「作家

の運」という自伝でありました。

 そして、最後の翻訳となったH・G・ウェルズの自伝的小説だったとのことで、

そういえば、ロッジの書いた「絶倫の人」というウェルズについての本の訳者も

高儀進さんでありました。

 チャトウィン伝よりも先に高儀さん訳のロッジ伝のほうに手をつけなくては

いけないことです。

絶倫の人: 小説H・G・ウェルズ

絶倫の人: 小説H・G・ウェルズ

 
作家の運:デイヴィッド・ロッジ自伝

作家の運:デイヴィッド・ロッジ自伝