月の初めに

 岩波「図書」1月号の冒頭には、瀬戸内寂聴さんの京都での講演が掲載されています。
「これまでの百年、これからの百年」というタイトルでありますが、本当にお元気で
あります。
 この講演には、「ドナルド・キーンさん、鶴見俊輔さんと私は同じ大正11年生まれ
で」とありましたが、瀬戸内さんはことし92歳となるわけですが、本当にお元気なこと
には驚きです。
「図書」に掲載の講演から、目についたところの引用です。
「台風も地震も、そして戦争だって、あしたにも始まってしまうかもしれない、変な
時代です。そんな不安な時代に本なんか読んでいられるかと思うかもしれませんが、
不安な時代だから、明日がないから、きょうは本物の本を読みたいんです。そうして、
文化をお腹いっぱい食べて眠りたいですね。芸術も文化も、体の栄養には絶対必要で
す。これを忘れないでください。」
 前の日曜日にはテレビ番組でドナルド・キーンさんとの対談もありましたが、この
番組でも興味深い話をたくさんしていましたです。
ノーベル文学賞をめぐってのことで、川端康成ノーベル賞を受賞することがなけれ
ば、死ぬことはなかっただろうし、三島由紀夫ノーベル賞を受賞したら、あのよう
な死に方をすることはなかったろう等々です。
 三島由紀夫ノーベル賞候補にあがっていたというのは、当方も承知しておりました
が、今年になって50年間の非公開期間が過ぎたので、ノーベル財団は公式サイトで
63年の候補者や選考過程を公開したとのことです。(いまほど公式サイトをのぞきに
いったのですが、当該部分を確認することができずでありました。これは調べ方が
よろしくないか。
 http://www.nobelprize.org/nomination/literature/1963.html  )
 朝日新聞にはドナルド・キーンさんがコメントを寄せていましたが、このコメント
の終わりにも川端康成の受賞で三島由起夫が落胆したであろうとのことを推測すると
とありました。
 先日のTV番組では、瀬戸内さんが受賞の知らせを聞いて、すぐに川端康成さんの
ところにお祝いにかけつけたら、そこにやはりお祝いに来た三島由紀夫さんとも
遭遇したといってました。古い話ではありますが、川端康成が受賞したことで、
次の日本人の受賞までは最低でも20年はかかると三島由起夫は思って落胆したと
いうことですが、川端康成から大江健三郎の受賞までは26年もかかったという
ことです。1994年に大江健三郎の受賞から、ことしで20年ですから、そろそろとか
いよいよと関係者が色めき立つのも納得でありますね。