かってはどこの町にも

 八木義徳さんの小説の舞台となっているK市であります。

 「歓楽街のはずれにある小料理屋」で、しかしてその実態はでありますが、この

ようなストリーのなかで「小料理屋」へいくかというと、目的は酒を飲むことが目的

ではなくなりますね。

 なにかの小説(伊藤整の「若い詩人の肖像」だったろうか。)を読んだ時に、そば

屋に行くというのは、それも「小料理屋」に似たような意味に使われているようで、

さっぱり理解できなかったことがあります。たしかそうであったよなと検索をかけて

みましたら、井上章一さんの「愛の空間」でも紹介されているとありました。

伊藤整の小説を読んで釈然としなかったことが、「愛の空間」を読んで了解したと

うに思います。 (「愛の空間」を読んだのですが、いまは確認できず。)

  昨日に図書館から借りてきた池内紀さんの「東海道ふたり旅」をつまみ読み

しておりましたら、品川をでてすぐが川崎宿となりです。八木さんの小説のK市で

ありますね。

「昭和40年代、トルコ、バー、ピンクサロン、キャバレー。盛り場といわれる界隈に

は、四本柱のようにして揃っていた。先の三つは風俗産業の取り締まりに応じて

形態を変えたが、キャバレーに警察の手が入ることは少なかったのではあるまい

か。比較的に穏当な業界とみなされていたわけだ。穏当を欠くことがあっても、

それはキャバレー事態ではなく、店を出てからの所行であって、個人のことがら

に類する。」

 池内さんはかっての街道筋を歩いて川崎宿で、今は廃業したキャバレーの建

物を目にして、「場所柄は江戸のころでいうと『宿外れ』にあたり、宿場職人の

目の届かないあたりに世をはばかる商売が栄えた。意味深い土地の記憶の

一つともいえる。」と書いています。

 日本全国のあちこちに、こうした「意味深い土地の記憶」はあるのですね。 

東海道ふたり旅: 道の文化史

東海道ふたり旅: 道の文化史