今年売れた本

 先日の新聞読書欄に「今年売れた本」という記事がありました。日販しらべで昨年
11月の一年間であります。コメントをつけているのは、ライターの武田砂鉄さんです。
 上位20冊の書名があがっているのですが、今年も幸いなことに一冊も手にしていな
いことであります。売れる本には(特にもの欲しげな本には)できるだけ、手を出さ
ないという、当方の流儀は、なんとか今年も守れたようであります。(それがどうし
たではありますが。)
 武田砂鉄さんが、「今年最も売れた新書が、刊行時のオビ文に『日本人と彼らは
全くの別物です!』と掲げたものであることを嘆かわしく思わざるを得ない。」と記し
ていて、売らんかなの本を喜んで買う人も、また存在するのだと思いました。
このような本を、好んで読んでいる人から議論をふっかけられると、ひどくいやな気分
となりますから、できるだけ近づかないほうがよろしいでしょう。
 こうしたとんでも本でも、すべてが曲解や誤りで作られているわけじゃないでしょう
が、極小を最大化するような論の組み立ては、いかがなものかと思います。
細部に対するこだわりというのは、当方のなかにもあるのですが、そういうのは多数派
を目指してはいけないと思っているのですね。
 当方の先輩にあたる人にも極端な人がいまして、左から右へ、大きく立場を変えたと
いわれています。まあ、自分の存在を誇示するためであるのかもしれませんが、最近の
愛読書は、武田さんにいわせると「嘆かわしい」ものばかりであるようで、先輩のとこ
ろを訪ねた知人は、ずいぶんと「彼らは別物」という話を聞かされたといっていまし
た。
 この先輩の場合は、若い頃から極端で、他人の意見に耳をかたむけて、自分の有り様
を調整するという人ではなく、その昔であれば、組織で出世するなんてことは考えられ
なかったのですが、どうしたわけか相当な出世をして、されに敵を増やすこととなりま
した。
 このような人が出世をするというのが、ここ20年くらいの日本の社会であるようで、
人々の尊敬を集めない人が国のトップにすわっているということは、彼らの国とこの
国に共通の現象のようです。