気になる本

 最近新聞の広告でみかけて気になった本についてであります。
 一冊は講談社文芸文庫の新刊となりますので、これは行きつけの書店にはいっていま
して手にとってなかをのぞくことができました。とはいっても、小沼丹さんのものでは
ありません。
 文芸文庫としては、たいへんユニークなものでして、よくもこのような企画が通った
なと思いました。

獄中十八年 (講談社文芸文庫)

獄中十八年 (講談社文芸文庫)

 元版がでたのは1946年とありますので、大戦が終わった翌年のことです。このお二人
は、どちらも戦時下にあって拘束され、非転向を貫いたとということで、当時のヒーロー
となったのであります。
 もちろん、その後は日本共産党の指導部の一員となり活動を続けましたが、占領軍か
ら追放されて海外へと逃れ、その地で亡くなったり、その後の共産党内部の路線をめぐ
る争いで、党を離れることになったりして、現在の日本共産党の正史では好ましくない
人物のレッテルが貼られて、現在にいたっているはずです。
 当方は、このお二人について知るところはないのでありますが、どちらも人間として
魅力的な方であったようで、当方の友人の一人は、志賀義雄さんを人生の師としている
のでありました。
 彼は当然のこと、この本の元版を持っていると思われますが、ほんとうに久しぶりと
なる志賀義雄さんの著作を購入するでありましょうか。
 当方が、この本を手にしてみたのは、この本の解説を鳥羽耕史さんが書いていると
あったからです。数年前に参加した講演会後の懇親会の時に、ちょうどお隣に坐られて
いて、お話をすることができました。その時は、鳥羽さんが専門とする安部公房のお話
などを聞かせてもらったのですが、安部公房さんが生きた時代を追っていけば、当然の
こと、この世界にぶつかることになりますか。
 もう一冊は、光文社からでたものですが、こちらはまだ手にすることができていませ
ん。行きつけの本屋は、光文社のものがわりと入荷するのですが、これはレアすぎて、
だめでしょうね。
大西巨人と六十五年

大西巨人と六十五年

 十八年のあとは、六十五年であります。大西巨人さんの奥様による回想録ですね。
大西巨人のような人と六十五年も一緒にいた人というのは、どういう方なのかと思う
ことです。とにかく寡作なのですから、生活が大変であったことは疑う余地がありま
せん。相当の人物でなくては、とうてい六十五年も共にいることはできないことで
しょう。
 それにしても、大西巨人の作家生活を文字通り支えたのは、光文社も同様でありま
して、大西巨人に直接関わった編集者は、ほとんどいなくなっているでありましょう
が、こうして大西巨人関連本が光文社からでるところに光文社の骨っぽさを感じること
であります。