昔は穴のあいたくつしたは、繕ってはきつづけるというのは、ごくごく普通のこと
でありました。最近はくつしたが安くなっているせいもありまして、繕ってまではく
なんてことはないのでありましょう。そもそも穴のあいたくつしたなんて、すぐに
捨てられるのが、最近の流儀です。
「穴あきくつした」というのは、先日に購入した田中克彦さんの著書のタイトルに
あったものです。これには「カルメンの穴あきくつした」という2ページほどの小文が
収録されていて、それを「田中克彦セレクション1」のタイトルとしたものです。
カルメンの穴あきくつしたー自伝的小萹と読書ノート (田中克彦セレクシヨンI)
- 作者: 田中克彦
- 出版社/メーカー: 新泉社
- 発売日: 2017/11/22
- メディア: 単行本
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ジプシー(ロマ)、モンゴルetc たたかう言語学者・田中克彦の興味は尽きぬ」とあ
りますので、この小文のタイトルを著書名にするのは、ちょっと意表をついています
ね。
もちろんカルメンでありますから、ジプシー(ロマ)につながることになります。
「オペラや映画を通じてあまりにも有名になってしまったものだから、人は読んでいる
つもりでいるが、ほんとうは読んでいないという作品が世の中にはたくさんある。
メリメの『カルメン』もその代表的な例だ。」
このように田中さんは記すのですが、この文章には昔に読んで、そのときに「女の
くつ下には穴がいくつもあいていました」というくだりが印象に残っていて、今回に
読み直したという話となります。
小文の後段では、カルメンはジプシーで、ホセはバスク人とあって、メリメは
「ジプシーの言語、風俗に関して、なかなか学識のある人」であったとつながっていき
ます。
今回コレクションにまとめるにあたって、「2017年のつぶやき」を添えているのです
が、この文章には、「もともと日本にはジプシーは暮らせる環境がないから、に出会う
チャンスがない。そのような実態を知らない民族の名をとりかえて呼ぶことの意味を
考えることは、また別の話である」とあります。
そして、この文章のあとには、「受難の歴史を生きる『流浪の民』」という文章がお
かれています。