柿のたねといえば

 ここのところおやつに柿ピーを食べることが多く、柿のたねを見れば「夏の闇」
に登場する女性のことを思い浮かべます。もちろん「夏の闇」というのは開高健
小説で、そこで描かれている外国暮らしの日本人女性が好んで食べているのが柿のた
ねで、作中の彼女は一斗缶にはいった柿のたねをストックしているのでした。

夏の闇 (新潮文庫)

夏の闇 (新潮文庫)

 昨日に届きました朝日新聞出版「一冊の本」三月号に掲載の重里徹也さんの文章を
見ましたら、これのタイトルは「今こそ、開高健」というものでした。
ここでは、開高健の代表作「夏の闇」を手がかりに開高の作品世界が分析されていま
す。
「たとえば、代表作の『夏の闇』(新潮文庫)でもいい。パリらしき都、そしてボン
らしい都市で暮らす主人公の周囲には、いくつもの物語の種子が明滅している。それ
は読み進む私たちの興味や共感を誘ってやまない。
 共に愛欲にふける女性。彼女の過去の日々と現在の思い。会話と性交。主人公の来
歴。ドイツの湖での釣り。ベトナムとおぼしき戦場の記憶。その戦場の今の情勢。」
 開高の作品世界についての分析は、このあとに続くのですが、当方の興味は、共に
愛欲にふける女性というところにありです。
 「夏の闇」の女性については、その女性が若くして亡くなった(それがきっかけと
なって開高は「夏の闇」を書いたともいわれています。)こともあり、いまでは検索
をかけますと、その方についての情報も容易に得ることができます。
 当方は、はじめて「夏の闇」を読んだ時には、この「柿のたね」の女性が現実の
人をモデルにしているとは思いつきませんでした。開高について書かれた本なども
手にすることがなかったので、その女性は、作品の中にのみ存在する人でした。
 たしか、2000年頃に読んでいた雑誌「ラピタ」に開高のことを取り上げた連載が
あって、そこに「柿のたね」のモデルとなった女性が紹介されていたように思いま
す。それを見て、実際にこのような女性がいたのかと驚いた記憶がありです。
 本日はお天気が良く、すこし暖かでしたので、古い「ラピタ」と「夏の闇」が収録
されている「開高健全作品」を探してみたのですが、「ラピタ」はあったものの当該
ページを確認できず、「全作品」のほうはたしか物置にあるはずとあたりをつけて、
いってみましたが、見つけることをできずでした。これは、またの機会にです。
 どうして、「柿のたね」女性のことについて話題にするかといいますと、これから
購入予定の「田中克彦自伝」に、この女性が登場するとあったからです。
 「mmpoloの日記」に紹介されていました。
( http://d.hatena.ne.jp/mmpolo/20170220
田中克彦自伝は、いまだに入手することができず、たぶん来週には手にできるはず
ですが、こういう形で、田中さんと「柿のたね」女性は重なっていたとはです。
田中さんが、こういう女性を認めることができないのは、そして相手の男性を評価で
きないのは理解できることです。