潺潺たる水の音 2

 須山静夫さんの「地下に潺潺たる水の音を聞け」を読んでおりました。
 「潺潺たる」というのは、どのように読むのであったかと思うのですが、この文章
の最後のところに、この言葉はでてきまして、そこには「潺潺(せんせん)たるとふ
りがながついていました。
 「地下に潺潺たる水の音を聞け」は、須山さんが参加していた同人誌「月水金」に
発表されたものということですが、思わず苦笑いしてしまいそうな味わいの小説(?)
であります。
 還暦を間近にした須山さんが、誕生日を記念してということで妻と娘さんからスコッ
プをプレゼントされたことで、その昔に取り組んだ庭に穴を掘るという作業を再開し、
それから十数年にわたってはまってしまうというお話です。
 前に掘ったのは池をつくるためで、畳三枚分くらいで、深さは60センチくらいだった
そうですが、還暦前にやってみようと思ったのは、地下室(!)を自分で作るという取
り組みであります。
 これをスコップを使って自分で掘り、でてくる土を処分するための仕掛けを作り、
そのあと鉄筋コンクリートを敷設していく過程が作業日誌のように記されています。
この作業はなんと十四年も続いたのでありますね。
 須山さんの作業日誌でありますので、本日はこのような作業をした、このようになっ
たということが書かれているのですが、こうした作業に明るくない当方は、どのような
作業がされていたのか文章を読んだだけではよく分からないというのが難点であります。
最初のところで、排出土を運搬するための手作りの仕掛けが絵で掲載されているのです
が、こうしたものがあれば、もうすこしわかりよかったかもしれませんが、それはない
ものねだりですね。
 本当にあきれてしまうようなDIY作業なのでありますが、その結果はどうなったかは
読んでのお楽しみとして、このような作品は商業雑誌では、決してお目にかかることが
できないものですね。

地下に潺潺たる水の音を聞け

地下に潺潺たる水の音を聞け