図書館から借りた本 3

 借りている「文字を作る仕事」から、萬玉邦夫さんについてのくだりを紹介です。
 なかなか萬玉さんについての文章を目にすることができませんので、鳥海さんの文章
は貴重であります。もっとあちこちで目にできてもよろしいのに、これはきっと何か
あるのでしょう。
 平野甲賀さんが「オレが勝てない装丁家」という萬玉さんでありますからして、その
主な作品を集めたものがあってもいいのでしょうが、これはきっと文藝春秋社の本に
限られていて、しかも特に装幀者名は記されていないのでしょう。萬玉さんが担当する
書籍で、自らが装丁を担当したのものにはどのようなものがあったのでしょう。
 それはそれとして、鳥海さん萬玉さんにあったのは一度だけとあります。そのきっか
けをつくってくれたのが、デザイナーの平野甲賀さんで、萬玉さんとの面会に同行して
くれたとあります。
 それじゃどうしていくことになったかであります。
鳥海さんが所属する工房で制作した書体のコンセプトは、「藤沢周平を組む」という
ものだったとのことです。藤沢周平作品の本文を組んで、藤沢周平世界をすこしでも
伝わりやすくする本文用の書体がやっと出来上がって、これのいわば見本帳ともなる
リーフレットを、藤沢周平作品をプリントすることで作ろうということになった時、
その了解を藤沢夫人(ご本人はすでに亡くなっていた。)に求める手紙を送ったところ、
お返事をいただき、そこに権利のことは文藝春秋に任せてあるので、そこに問い合わせ
してほしいとあり、それで鳥海さんは平野甲賀さんに仲介の労をお願いしたのです。
「平野さんにそのことを話すと、知っている人がいるという。その人が萬玉邦夫さん
だった。」とあります。
 これから萬玉さんのエピソードがいくつかあるのですが、まさに一期一会という話で
あります。