文庫本を狙え 2

 「文庫本宝船」を確保したので、せっかくだから借りて読んだままで、いまだ入手
できていない「文庫本玉手箱」を、これを機に確保しましょうかと検索をかけてみま
したら、先月の中旬くらいまでは、けっこう安価で販売されていたものが、ここに
来て価格が上昇しています。これはめでたいことと思いますが、入手するのは、もう
すこし待ってみることにしましょう。
 著者にとっての一番は、こうしてちくま文庫にはいったり、9年分が単行本にまと
まったことで、シリーズのほかの本も動き始めることですが、これはどうでありま
しょうね。
 「文庫本を狙え」シリーズが文藝春秋社から単行本としてでなくなったのは、どう
してだろうと思っていました。とはいうものの「文庫本を狙え」を最初に単行本にし
たのは晶文社でありまして、文藝春秋社はその続編からでした。(このへんの簡単な
事情は、坪内さんのちくま文庫と「文庫本宝船」のあとがきにありです。)
 結局「文庫本宝船」が、本の雑誌から刊行となったのは、文春がこれは売れない
からと単行本の企画を通さなかったからとのことですが、本当にそうなのかなと思い
ます。(週刊文春の連載ものといえば、小林信彦さんのコラムのことを思いだします
が、これは定期的に単行本となり、しかもそのあと文春文庫におさまります。この扱い
とくらべて、ずいぶん違うです。)
 このあたりは、編集者Mさんののろいのようにも感じるのですが、これはないか。
坪内さんとMさんこと萬玉さんの間になにがあったのかなと、ゴシップ好きの当方は
思うのですが、これについての具体的な話は、いまだ坪内さんは書いていないようで
す。
 ちくま文庫あとがきには、次にようにありです。
「萬玉さんと私はこののち、あることがきっかけで絶交状態となり(と書いたものの
その理由は謎だ)、それが原因で『文庫本を狙え!」は晶文社から出、文庫化される
こともなかった」
 坪内さんが萬玉さんについて書いているものはないかなと、確認するために一冊
確保してみました。これには「谷沢永一さんの思い出、そしてMさんのこと」という
文章がありました。

東京タワーならこう言うぜ

東京タワーならこう言うぜ

 Mさんとは、谷沢永一さんと坪内さん共通の編集者であったMさんこと萬玉さんで
あります。ひどく難しいと思われる谷沢さん、萬玉さん、坪内さんの三人で、普通で
あれば編集者が著者にあわせるのでしょうが、萬玉さんはそんな人ではなかったので
しょうね。
 この文章で、坪内さんは「Mさんはとても難しい人だった。私も難しい人間だ。」と
書いていますので、なにかで激しくぶつかったのでありましょう。Mさんが元気なうち
は、「文庫本を狙え」シリーズは文春から単行本となることはなかったようでありま
す。ことしちくま文庫がでたことで、やっとそののろいは消えたでしょうか。