I AM STILL ALIVE

表題は、本日に読んだ文章にあったものです。それは、四方田さんの次の本にあり
ました。

 今年の7月に新刊で購入し、ちびちびと読んでおりました。
 四方田さんが87年から88年にニューヨークに滞在をしたとき朝日ジャーナルに連載し
たエッセイに、2015年にニューヨークに滞在したときのエッセイを加えて一本となった
お徳用文庫です。
 時間がかかっていたがために、不思議な照応があったりして、印象が残ることになり
ました。先日に拙ブログで、この時期といえば「クリスマスのフロスト」が読みたくな
るねと記しましたら、ちょうど今読んでいるという方から書き込みをいただいたのです
が、それと同じような気分になりました。
 それは、「I AM STILL ALIVE わたしはまだ生きています」という文字をしるした
絵はがきを知友人に送った画家について書かれたところです。
河原温とは最初の滞在時に出会い、その後も途切れとぎれではあるが親交が続いて
いた。ソホーにあるアパートメントはみごとに収納が行き届いていて、わたしがいつも
通される部屋には、クリーム色の壁と戸棚以外に何もなかった。・・アパートメントは
無秩序なるもののいっさい排していて、まるでそれ自体が河原温の美術作品であるかの
ように、透明で純粋な観念によって統括されていた。」
 河原さんのニューヨークでの作品は、画面の中央に日付が大きく入っているもので、
まるでデジタルカレンダーのようなものです。
河原温は地上のほとんどのことに無関心であるように見えた。他人のパーティにけっ
して足を向けなかったばかりではない。自分の個展のヴェルニサージュ(注 特別公開)
にも顔を見せなかった。写真を撮られることも嫌いで、現世にあって生身の自分ができ
るだけ希薄な存在で留まり続けていられるように振る舞っていた。」
 この河原さんが残した作品は、「無地の画面に日付だけを記した、大小さまざまな油
彩」と「世界中の年を訪れ、俗悪観光絵葉書を購入すると I AM STILL ALIVE わたし
はまだ生きています」のはがきであるようです。
 うっすらと名前のみを知っている人について書かれた四方田犬彦さんの本を読んでお
りましたら、林哲夫さんの一昨日のブログ(http://sumus2013.exblog.jp/24768158/
に、河原温さんへの言及がありました。そこには、河原さんのことがえがかれた宮内
勝典の作品の紹介もです。こういうのってうれしいな。思わず書き込みをしたくなる
ことです。