いただきもの 3

 藤原書店の「環」59号の小特集「粕谷一希さんを偲ぶ」であります。
「縁の深い三八名の方」に寄稿していただいたとありますが、この三八名の半分ほどの
方は、はじめて名前を聞く人でありました。「中央公論社」からサントリーがだしてい
た「アステイオン」、そして「都市出版」を活動の場にしたのですが、作家から編集者、
学者、外交官、経営者と多彩な寄稿者が、粕谷さんの仕事の幅の広さを示しています。
 杉原志啓という方が、「粕谷さんの本では、つまりかれの人となりは、ここでの
『思想の右、左を問わず』というところがポイントのひとつではないか。」と記してい
ます。これに続いて「コンサヴァというよりむしろオールド・リベラルな香りの漂う
論者のひとり」とあります。
その昔の「総合雑誌」に見られたリベラルな雰囲気を体現していた方といえるのでしょ
うか。いろいろな評価はあるのでしょうが、スケールの大きな人であったというのは
間違いないようです。
 何人かの方が、粕谷さんが中央公論社を退職してはじめて発表した「二十歳にして
心朽ちたり」に言及しています。
「私自身が最も好きな粕谷さんのご本は、やはり『二十歳にして心朽ちたり』であり、
一般的にもより注目されてよいお仕事かと思う。同書を拝読したころ私自身もちょうど
二十歳あたりで、主人公・遠藤麟一朗の若き苦悩が心にしみた。」
このように書いていますのは、同志社大学佐伯順子さんであります。
 これを見ると、またこの粕谷さんの本を読んでみたくなりました。