文士の時代かな

 「文士の時代」というのは、写真家 林忠彦さんの写真文集のタイトルになります。

文士の時代 (中公文庫)

文士の時代 (中公文庫)

 林さんのあとがきには次のようにあります。
「私は今からひと昔も前の十五年前に『日本の作家』というタイトルで、敗戦直後から
撮りつづけてきた百九人の現役作家の写真集を上梓し、それが日本の経営者、画家、
家元とつづく百人シリーズのきっかけになったのでした・・・・一昨年、『日本の
作家』の中から、いかにも文士らしい文士をピックアップして『文士の時代』として
まとめ、朝日新聞社から上梓され、今回また、何人か加わって文庫本となって生き返る
ことになった。写真家冥利に尽きることであり、本当にありがたいと感謝の気持ちが
いっぱいである。」
 元版と文庫本のあとがきをつなげていますので、十五年前というのと、一昨年という
くだりの時間はつながっていません。文庫版のあとがきは「昭和六十三年四月」とあり
ますから、ちょうど昭和の終わり頃のことになります。
 この時であっても、取り上げられた作家の半数以上はなくなっていたとありました。
 それにしても「文士らしい文士」であります。
「文士」という言葉を検索しますと、次のようにでてきました。
「文筆を職業とする人。文章家。作家。小説家。」
  当方が文士といって思いだすのは、その昔にあった「文士劇」というイベントで
ありました。文藝春秋が主催していたものが特に有名でありますが、あれは1977年
まで25年間毎年開催されていたとのことです。生で見たことはないのですが、映像と
なって、そのごく一部を眼にしたように思います。文壇というのがあって、そのなか
で文筆家として認められてギルドに加わることができた人というのが文士と呼ばれる
ようになったもののようです。
 林さんの写真から「文士らしい文士」のイメージです。
・ 普段着は着物である。
・ 坐り机にむかって仕事をする。
・ 書画骨董を好んでいる。
 「文士らしい文士」で、この条件にあてはまらないのは、主に戦後派の文士(破滅派)
でありますが、こちらに欠かせないのはアルコールと睡眠薬(またはヒロポン)である
ようで、戦前文士とくらべると戦後のほうが、文士として生きるのは大変であったよう
に思えます。