読んでいる本 5

 原武史さんの「皇后考」は、残り少なくなりました。これは最後までたどりついて
から話題とすることにいたしましょう。
 昨日に続いて安岡章太郎さんの「文士の友情」から話題をいただくことにします。

文士の友情: 吉行淳之介の事など (新潮文庫)

文士の友情: 吉行淳之介の事など (新潮文庫)

 読んでいるのは「あとがきに代えて」という安岡さんの娘さんである安岡治子さん
の文章。文士の娘としては、壇ふみさんとか、阿川佐和子さんよりも知名度では落ち
るのですが(すこし年少でもあります。)、ロシア文学者(東大教授)です。
ほんとうに、お父上に似なくてよかったことであります。父を反面教師として勉強に
励んだのでありましょう。
 娘さんから見た父親の肖像をあとがきからです。
「父は、持って生まれたとちりの虫に支配された一生だった。・・自分自身で身体を
壊すようなことをした面もあり、四十代の頃には、精神賦活剤のリタリン中毒になっ
た。これは、鬱病ナルコレプシーの患者が三錠も飲めば、忽ち猛烈な睡魔も撃退で
きるという劇薬なのだが、当時の父は、毎日これを百錠ほど、数か月か、下手をする
と一年近くも飲み続けていたらしい。」
 安岡章太郎さんの四十代といえば、1960年代となります。治子さんが生まれたのは
1956年ですから、ものごころがついた頃には、薬物依存に陥っていたことになります。
この薬物依存が、いつに始まっていつ終わったのかはわかりませんが、この時代には
「花祭」、「質屋の女房」、「幕が下りてから」などが発表されています。
 そういえば「幕が下りてから」といえば、これについて川嶋至さんの評論は安岡さ
んの怒りをかったとありましたが、その評論は読むことはできていないのですが、
安岡さんの私生活のスキャンダルともとられることが話題になったようで、安岡さん
にもどろどろとした過去があったのですね。