世間の人 4

 鬼海さんの「世間のひと」の後ろのほうにおかれている作品は、2012年から24回に
わたって「ちくま」の表紙を飾ったものであります。
昨日に話題にした「たくさんの衣装を持ったお姐さん」は、その第一回目となりまし
た。とにかく捨てないひとでありますので、自宅のどこかにあるはずと、本日に帰宅
してから鬼海さんが表紙写真を担当した号をさがしてみることにしました。
ただいま座っています場所から手をのばしたところに、3冊ほど見つかって、これは
さい先がいいやと思っていたのですが、これは昨年末のものでありました。その後、
何カ所か探してみましたら、15冊が発掘されました。残念ながら、第一回目である
2012年1月号は見つからずでありました。
 「ちくま」は表紙を担当する方が、その裏面に文章を寄せることになりますが、これ
は、いまもかわっていません。鬼海さんも、その前に担当された画家 林哲夫さんも
ともに文章を良くする方であります。
ちなみに昨日に引用した「たくさんの衣装を持ったお姐さん」についての文章は、
2013年4月号に掲載となったものでありました。このお姐さんへの文章はポートレート
とあわせて読まれるべきでありましょう。
 表紙裏の文章は、ほとんど捨てられているようで、これはすこしもったいないことで
あります。
 帰宅してまず行ったのは、過去の「ちくま」の発掘と書きましたが、ちょうど本日に
「ちくま」2014年4月号が届いていました。発掘作業を終えてから、届いた4月号を
手にしてみれば、巻頭に山田太一さんが「限定して、独自の世界を。」という鬼海さん
の「世間のひと」に寄せた文章がありました。
「(たくさんの衣装を持ったお姐さん) この言葉からどんな人物を想像なさるだろう
か。言葉は無力というか言葉あっての写真というか、この一枚一枚につけられた言葉も
必要に満ちていて、鬼海さんの力作なのである。その上ところどころにあるエッセイが
面白くて、・・・・」
 山田太一さんがこのように書かれているのに同感であります。山田さんの文章は、
次のように続きます。
「文庫になったのだから、これはもうめでたいといわなければならない。大型写真の
魅力は損なわれるのでは、と気がかりだったが、この節の印刷はたいしたもので、王者
の風格はいくらか薄まるが、王が400人近いと、この方がかえっていいくらいの長所も
あると思った。」
 鬼海さん「浅草シリーズ」の集大成でありまして、これが文庫になったというのは、
ほんとめでたいとしかいえません。