12月の楽しみといえば、その昔の「ちくま文庫」のことが思い出されました。
「ちくま文庫」の創刊は12月で、それ以降12月といえば、例月のほぼ倍にあたる冊数
が刊行されるのがならいでありました。その時代は「ちくま文庫」の12月新刊は、い
つもよりわくわくとして待ったものであります。
そんなことを思いながら、「ちくま」12月号で文庫新刊のラインナップをみますと、
なんとなくおめでたいという雰囲気がなくて、さびしく思うことです。
「ちくま」12月号を手にして、目についたのは、目次で「特別掲載」となっている
間村俊一さんの文章となります。
目次でいう「特別掲載」というのは、どういうことでありましょうね。目次での文章
区分は、次のようになりです。
・表紙裏
・巻頭随筆
・特別掲載
・新連載
・連載
・コラム
・ このほかにひとくくりになっているのは、その月の新刊に関係する文章です。
過去の数か月の「ちくま」の目次を見ましたら、いずれの月にも「特別掲載」と
いう文章(連載でも、その月の新刊をめぐっての文章でもないもの)が掲載となって
いるのがわかりました。
最近の「ちくま」が、ちょっと残念なのは連載ものの比率が高くて、今回の間村さん
ようなものが少ないことかもしれません。連載ものは、関心があわないと、何ヶ月も
読むことがなかったりしますからね。
ちなみに間村さんの文章は「富士写植の田中さん」というもので、間村さんの装幀
の文字を三十数年にわたって打ってくれた富士写植 田中靖一さんにささげる文章で
あります。これはほんととてもよろしいものです。文章には田中さんのポートレート
がそえられていて、この写真は鬼海弘雄さんが撮影したものです。
考えようによっては極めて贅沢なページでありまして、「ちくま」12月号はこれ一つ
楽しめば、元を取った気分になることうけあいです。