世間の人 3

 鬼海弘雄さんの世界でありますが、2003年に刊行された「ペルソナ」の表紙に採用
された男性の写真は、いかにも王という感じであります。今回の文庫本にももちろん
収録されていて、紹介には「舞踏家吉本大輔 2001」とありました。
 そういえば、以前に鬼海さんをとりあげたテレビ番組を見たことがあったなと思い
出しました。あれはいつのことであったかと検索をかけてみましたら、その番組の
ホームページに、まだ残っていました。
(  http://www.mbs.jp/jounetsu/2003/12_28.shtml )
 もう40年も浅草へと通っているのでありますからして、鬼海さんはそこでは有名な
存在であるようです。同時に、何度もモデルとなっている人もいらっしゃってです。
この「世間のひと」文庫本で一番写真が多く取り上げられているのは、「たくさんの
衣装を持ったお姐さん」という方でありまして、1991年から2011年にかけての9枚で
あります。この女性は、「ちくま」の表紙にも取り上げれていて、とても印象に残る
方でありました。
 この女性に関しては、「世間のひと」で鬼海さんが文章を寄せています。
「二十一年間、衣装持ちで小柄なお姐さんには幾度も壁の前に立ってもらった。
『ちくま』の一回目の表紙の写真が2011年八月撮影。
 お姐さんはカメラにはいつも饒舌なポーズをとったが、普段は無口で静かな人だっ
た。碑のわきにポツンと終日立ちつづけていた。
 何年か前にある事情で、居場所を境内から六区の路上に変えた。撮る回数が減ったが
よく顔を見に行っていた。」
 前半の部分を引用しましたが、後半部分はぜひとも本を手にしてご覧ください。