建築家つながり

 丸谷才一さんの小説「今は何時ですか?」の、作中作の主人公の弟さんの職業は建築
家でありました。作中の小説家「浜谷百合子」さんによる主人公の家族についてであり
ます。
「彼らは浦和の土建屋の家に生まれた三人きょうだいで、上の二人と喬志とが離れてい
るのは、父が兵隊に取られてゐたせいか。・・・
 彼は学校の成績は総じてよく、とりわけ図工と理数科が得意だった。姉がアメリカの
大学にはいると、弟は図工の宿題で作った、時代も国籍も不明の街をダンボールの箱に
入れて船便で送り、クリスマス・プレゼントにした。姉はこれを嬉しがって、建築家に
なるといいと航空便で勧めた。図工と理数科がよくできる土建屋の息子が建築家を志望
するのはごくありふれた話で、父兄も一種の階級上昇のやうに喜ぶ。」
「図工と理数科がよくできる土建屋の息子」が「建築家を志望」するのはごくありふれ
た話とありますが、どうも土建屋という言い方にひっかかったりしてです。土建屋より
も建築家のほうが、階級は上かとおしかりを受けそうであります。丸谷才一さんが生み
出した作家さんが、そういっているのです。
 この建築家の弟さんのことについては、うわさばなしの聞き取りのように書かれてい
るのですが、次のようになります。
「いいやつでね。頭もいいし。まあ男前。でも才能ない。みんなに好かれているから
先輩の事務所にはいって。仕事は多いからね、建築事務所」
 特にめざましい業績を残すことなしに、支笏湖心筋梗塞で突然亡くなるのでした。
 建築家として名前を残すというのは、アーティストの場合と同じで、本当に大変な
ことです。
 建築家つながりということで、本日も建築家の話題といたしましょう。
10月31日(水)朝日新聞の文化欄に、次の記事がありました。
 「愛媛・日土小の校舎、国の重文に
 愛媛県八幡浜市にある日土小学校の二棟の校舎が、『木造モダニズムの優れた作品』
として国の重要文化財に決まった。」
 ここ数日、文部大臣の発言が波紋をひろげているのですが、これを決定するには異論
を唱えなかったようで、関係したお役人たちはほっとしていることでしょう。
 日土小学校といえば、八幡浜市を拠点とした建築家 松村正恒さんの代表的な作品で
この方のついては、以前にさらっと話題にしたことがありました。
http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20070613