久しぶりで新聞で丸谷才一さんの名前を目にすることにです。数日前には
友人からのラインに丸谷才一さんに関する話題がありで、これは丸谷さんの本を
手にするようにとのことなのかな。
まずは、本日の新聞からですが、そこに「丸谷才一と台湾独立運動」という見出
しがありまして、これの書き出しからは、次のようになります。
「丸谷才一の長編『裏声で歌へ君が代』に『台湾民主共和国大統領』の洪圭樹
なる人物が登場する。これにはモデルとなった廖文毅という政治家がいる。
戦後、中国国民党の圧政が始まって台湾を脱出して東京に臨時政府を樹立、大統
領となり、台湾独立の旗を振った。その後、国民党政権に脅迫めいた説得をされて
65年、台湾に戻った。この悲しい経緯が小説後半の主軸となる。・・
丸谷は小説の後記に『これは虚構の物語である』という言葉をわざわざ残して
いた。そのためか、当時の朝日新聞の書評は『台湾民主共和国」を丸谷が発明し
た『架空の組織』と書いている。」
この小説の発表は1982年とありますので、すでに40年も前のことになりますね。
この小説が発表となる、ほんの10年前に日本は中華人民共和国と国交を結んで、
中華民国との国交を断ったのであります。
65年に台湾独立運動のリーダーは、当時の国民党政府の説得を受けて台湾に
帰国したとありますので、この時代はいまだ国民党政府が中国の代表政府であった
のであります。
その時代に、大陸から渡ってきた蒋介石一派ではなく、台湾人による統治を目指
すというのが台湾独立運動でありまして、当方のような世代には、その活動家として
邱永漢さんの名前が思い浮かびます。
丸谷さんの小説を読んだ時は、中国はいまだ文化大革命が終えたばかりの頃で、
開放改革などには手がついていなかったのですから、中国は、人口がやたら多くて
貧しい国という認識でありました。蒋介石の主張のように大陸へと侵攻するという
のは夢物語とは思いましたが、本当にこの半世紀の中国、台湾、日本の関係の不思
議であります。
いまでは台湾のありようもすっかりと変わってしまって、丸谷さんの小説を話題に
する人もいなくなっていると思ったことですが、これは久しぶりに手にしてみることに
しましょうかな。