建築家の本

 建築家を取り上げた本とか、建築家が書いた本というのがあります。
 最近は安藤忠雄さんのようなスターがいるせいもあって、情報発信も活発になって
います。同じくグランドデザインにかかわる仕事ではありますが、土木関係では、
文章を活発に発表する方があまりいないのは、建築と土木の業界のスポンサーが
違うからでしょうか。
 大きな土木工事というのは、ほぼ例外なしに公共からの発注でありまして、あまり
強いメッセージをこめるのは難しいのとくらべると、建築というのは、個人からの
依頼や企業からの依頼があって、そこには依頼者の思いが入るからでしょうか。
 安藤忠雄さんの出世作ともいえる「住吉の長屋」などは、個人が施主であるから
できることで、このような提案を公共のコンペで行ったとしても受け入れられるはず
もなしです。
 ということからもうかがえるように公共を依頼主とする土木関係には、斬新とか
個性的というのはタブーであるのかもしれません。そんなことで土木関係で一般読者
を対象とする文筆家がすくないのかなと思ったりします。
 土木系で文章を発表するといえば、公園関係のプランナーだけは例外かもしれませ
ん。こうしたなかには、坂崎重盛さんなんていう大物がいました。
 建築家の本というのは、眼にする機会が多くて、今月のちくま文庫新刊には「日本の
建築家 伊東豊雄・観察記」というのがありました。この文庫帯には、伊東さんの言葉
として、「アーキテクトとは、コンペを競うK1ファイターのような存在である。」と
あります。

にほんの建築家―伊東豊雄・観察記 (ちくま文庫)

にほんの建築家―伊東豊雄・観察記 (ちくま文庫)

 元版から6年しての文庫化でありますが、こうした分野のものはへたな文学系よりも
ずっと売れるということなのでしょうね。