月の初めに 3

 先日に届いた「みすず」読書アンケート号を手にして、なかをぱらぱらと見たのです
が、その翌日の朝刊には、鈴木博之さんが肺炎でなくなったとありました。
「みすず」アンケートの最初のページに、鈴木博之さん(建築史)のあげる5冊が掲載
されていました。たしかこのアンケートの掲載は、到着順であったと思いますので、
相当に早くに回答を寄せておられて、それから体調を崩されたのでありましょう。
 ちなみに鈴木博之さんあげているのは、次の五冊です。
 磯崎新 「磯崎新建築論集」岩波書店
 「丹下健三 伝統と創造 瀬戸内から世界へ 」 美術出版社
 槙文彦 「漂うモダニズム」 左右社
 RIA 住宅の会編「疾風のごとく駆け抜けたRIAの住宅づくり」 彰国社
 篠原修 「内藤廣と東大景観研の十五年」 鹿島出版会

 この五冊については、「長期的な展望にたった読書というよりは、日常的な仕事の
なかで触れたものばかりである。」とあります。
あげているのが、丹下、磯崎、槙といずれも建築の重鎮に関するものですから、これは
専門のど真ん中のものであります。
磯崎さんの本については、次のコメントがありです。
「友人たちと議論になっているのは、磯崎の知識人としての影響力、あるいは建築家と
しての影響力はどの範囲にあるのかという問題である。つまり、磯崎は歴史のなかに、
本当に残る存在なのかという問題なのである。」
 鈴木さんは、まだ68歳とありました。葬儀委員長は安藤忠雄さんで、安藤さんを
東大に招いたのは鈴木さんたちなのでしょう。
 最後の「東大景観研の十五年」についてのところには、次のようなコメントがありま
した。
「著者の篠原とわたくしは同い年で、わたくしはこの時期、となりの建築学科建築史
研究室にいたので、ここで語られる土木分野にデザイン教育を持ち込む試みはよく見て
いたし、その成果もよく知っている。教授であった篠原は、東大出ではない(早稲田出)
の建築家内藤廣を招聘して、その冒険に成功したのだった。」
 東大出でない人を東大教授にむかえるというのは、冒険とあります。それでいくと、
大学もでていない安藤を東大にまねくというのがいかに無謀なことと思われたかであり
ますね。