平凡社つながり 20

 昨日に続いて蘆原英了さんの著書にあります「恋の花」の話です。
「フランスでは若者たちは、リラの森にゆくことが大好きだ。女の子を連れて、リラの
咲き乱れた森へ入ってゆけば、もうしめたものだという。リラの花のむせかえるような
匂いをかぐと、どんな不感症の女性も思わずよろめかざるを得ないという。事実、あの
素晴らしい匂いにむせたら、恋をしないでいられるほうが不思議である。
 だからフランスでは、リラの花を恋の花といっている。そして恋の花はリラばかりで
なく、鈴蘭の花もそうである。そういえば花はみんな恋にむすびついているとも言え
よう。バラの花なども例外ではないが、こういう考え方はフランス的で、日本的感覚と
はちがうようだ。」

 これは当方の家にあるリラの木でありますが、花がすくなくてさびしい限りでありま
して、これでは「むせかえるような匂い」などは望むべくもありません。あちこちの
お宅には見事なリラの木があるのですが、特に恋の花という意識で育てているお宅はない
のではないかな。パリとこちらではリラの木じたいが違うのかもしれません。(自宅の
リラの花は6月9日に撮影したものです。)
「5月1日は万国の労働者の日、いわゆるメーデーであるが、パリでは鈴蘭の小さな花束
が盛り場という盛り場、地下鉄の出入口、広場という広場で売られている。その日だけの
臨時の花売りが、街に一杯あふれている。・・・
 その年を幸福で暮らしてほしいと思う女性に、5月1日は鈴蘭の花束をおくる日なので
ある。ふだんから好きだ、好きだといっていながら、その日に鈴蘭の花束をおくらないと、
嘘がばれてします。不誠実な男として、たちまち信用を失ってしまう。」
 5月1日のことを「鈴蘭まつり」というと、この文章にはあるのですが、これは初めて
ききました。「イヴ・モンタンが主演した「5月1日」という映画が「鈴蘭まつり」とい
う邦題で封切られて以来のことであろう。」とありますが、こちらでは鈴蘭も6月の花で
ありまして、パリの歳時記は、当方の住む地方とは一月ほどずれておりまして、パリと
当方の住むところでは、こちらのほうが緯度は低いのでありますが、パリの季節感のほう
が、東京に近いようであります。

 この時期の鈴蘭でありますが、このなかにはそれこそメーデー会場で購入した鉢植えの
鈴蘭を地植えとしたものもあったように思います。まさか、その年のメーデー会場で
鉢植えの鈴蘭を販売していた方が、イヴ・モンタンの映画のことをご存知であったとは
思いがたいことです。