小沢信男さんの刊行図書の案内を行っておりますが、本日紹介するのは当方が
最初に購入した小沢作品です。
若きマチュウの悩み わがバリエテ バリエテシリーズ
1973年9月25日刊 創樹社 定価1200円
この本を購入する時点では小沢信男さんのことを知っていたはずでありますが、
記憶があいまいになっています。このシリーズからでた長谷川四郎さんのものや
杉浦明平さんのものを購入していましたので、それに引き続いて勢いで購入した
ものかと思いますが、どうやら朝日新聞に掲載の書評を見てのようです。
古いスクラップ帳にこの書評が貼られていました。新聞掲載時(1974年1月21日)
には書評家の名前は記載されていないのですが、鶴見俊輔さんによるものであった
ようです。
この書評の書き出しは、次のようになります。
「小沢信男は寡作の小説家である。しかし生み出される数少ない作品を一度読むと、
忘れがたい味をおぼえさせられてしまう。そのようにして、もう二十年も前の『新
東京感傷散歩』とか、十年近く前の『わが忘れなば』などという作品を記憶にとど
めている小説好きの読者がどこかにいることだろう。」
書評ではこのようにありますが、小沢さんの作品を手にする機会はないのでした。
書評子が「小説好きの読者がどこかにいるだろう」と書いているということは、そう
いう読者にはほとんど出会うことはなかったということでしょうか。
これに引き続き、次のようにあります。
「『若きマチュウの悩み』は、彼の短編小説十三編、戯曲一本、エッセー五編を集
めた作品集である。小沢信男の小説の芯にあるのは、なんともとらえがたいユーモ
アを生み出してやまない強靱な精神にあるといってよいだろう。歯切れの良い文体
と、ふとアドリブのようにさしはさまれる登場人物たちのとぼけた独白がまじり
合って、不思議な作品世界を構築してしまう。いうまでもないことかもしれないが、
彼の作品は相当に人を食ったふてぶてしいものであるわけである。」