本日の「毎日新聞」読書欄は、「2010年『この3冊』」(上)であります。
毎日新聞読書欄の書評担当である面々が、それぞれ「3冊」をあげています。
読書欄は、毎日新聞の売りでありますが、本日登場したのは、荒川洋治、池内紀、
池澤夏樹、鹿島茂、川本三郎、辻原登という人々であります。すごい顔ぶれで
ありますね。
池澤夏樹さんの最後のくだりは、「なんとあざやかな文学を生み出したこと
だろう。電子書籍などのおよそ手の届かない世界ではなかろうか。」というもので
あります。
池澤さんの編集で、先月に岩波新書から「本は、これから」というのがでていま
すが、この巻頭におかれた池澤さんの文章の最後は、次のようになります。
「周辺に置いた道具や素材がみなデジタル化によって重さを失ってゆく時に、
どうして肉体が保てるだろう。
本の重さは最後の砦かもしれない。」
これからの世代では、紙に印刷された教科書を使わない人たちがでるのではない
かといわれています。ほとんど村上龍の「コインロッカーベイビーズ」のごとくで
あります。
紙に印刷された本が、すぐに姿を消してしまうとは思えませんが、軽くなった本、
場所をとらない本に魅力を感じないかといわれると、言葉につまってしまいます。
しかし、紙に印刷されていなくては本とはいえないですね。
今さかんに論じられていることは、すでに10数年前に「季刊本とコンピュータ」で
取り上げられていました。大日本印刷がスポンサーとなって、期間限定で刊行された
雑誌で、南陀楼綾繁こと河上進さんが編集を担当されたものですが、この雑誌が
刊行されていた時には、もうすこし早くに今の事態になるだろうと思われていました。
その後大日本印刷は、丸善、ジュンク堂を傘下におさめて、印刷した本を販売する
仕組みを守る動きもしています。これまでは町の本屋は大型店に駆逐されて姿を
消してきましたが、大型店も生き残りができないという出版不況は、どこまで続く
のでありますか。