綜合雑誌「展望」3

 先日の「展望」創刊200号記念特別号の表紙写真をみますと、右下のところに紙片が
貼られていたなごりが残っています。記念号の時などに、帯のような紙片が貼られて
いたことがあります。読んだりするのには不要なものですから、とれてしまっても、
どうということもありませんが、この紙片にはどのようなことが記されていたので
しょうか。(もちろんまったく記憶には残っておりません。)
 この記念号は、全体で328ページの増大号ですが、特別定価390円とあります。普段は
二百ページほどで、定価は300円弱だったようです。
この号の最終ページは、「読者へ」という短い編集部からの文章がありますが、これが
編集後記のようです。
「 昭和50年、一九七五年、戦後30年 いずれも今年のことでありながら、それぞれが
呼び起こすこの時代のイメージは錯綜している。この現実を見透かしうる思考の可能性
を問うて、ここで迎えた二〇〇号は分量倍大となりました。特別定価をご了承ください。」
 雑誌の巻末には、筑摩ニュースということで、12ページの出版案内が掲載されていま
す。ここにあります一番高価なものは、加納光於のオブジェ集ともいえる「プトレマイ
オスシステム」という作品集で、限定110部のものですが、これは定価310千円で、予約
特価で295千円でありました。
 ずいぶんと思い切った企画でありますが、これはすぐに完売となったのでしょうか。
 この時に、ちくま文庫はまだ刊行されていませんでした。この時代に、文学全集や
個人全集などのほかで定期刊行されていたのは、今はなき筑摩叢書でありますが、この
月に刊行されたのは、広津和郎「文学論」1400円とE・ジルソン「中性哲学の精神
(下)」1600円の二冊でした。雑誌の値段と比較すると、この時代の1400円というの
は、5倍弱というところでしょうか。いまでいきますと3000円前後くらいの感じかな。