EDIの本 2

 EDIというのは、エディトリアルデザイン研究所の略でありますが、ここが出版に
取り組んだのは、1983年のことです。
 雑誌「サンパン」を創刊するのですが、正式な名称は漢字で「舢板」でありまして、
すぐに文字化けしそうな誌名をつけた新雑誌の前途は、多難でありました。
この創刊号の発行日は「1983年4月1日」となっていますが、これもエイプリルフール
ではありません。

 これの「バルカローラ」という編集後記に松本八郎さんが、次のように記しています。
「 経験も実績も全く何もないところから雑誌作りを始めました。エディトリアル
デザイン(装丁やレイアウト)という仕事柄、出版界の動向はそれなりに気に掛り、
趣意書のような考えはここ数年来もっていながらも、出版におけるデザインというのは
所詮受け仕事のため、仲々実践するには至りません。それ故、自らが版元となり、自ら
の意思で作るところにしか、自分の思いを定着できない、との考えから発刊に踏み切り
ました。・・
 当初定価は百五十円くらいで、半裁の紙に刷り放し、A5判に折っただけの体裁のもの
を考えておりました。印刷も簡易オフセットの安価なもので、製本もなく、読者に
ブックバインディングしてもらって出来るだけローコストに仕上げるつもりでした。
 ところがご執筆頂いた諸先生の原稿を拝見する内、その気魄のこもった文章内容
を表現するに、ご執筆者に対しても、読者の方々に対しても、一応の体裁を造ることが
礼儀であろうということに思い至り、急遽その造りを変更することにしました。」
 結局のところ、定価は4百円ということになるのですが、この値段では「四千部
を売り切って、何カ月か先にやっと一号辺りの原価が回収できる状態」とのことで、
こうしたコスト無視の出版が、よくも20数年も続いたものです。