EDIの本 8

EDIの松本八郎さんは、もともとはエディトリアルデザインが専門でありますが、
83年にリトルマガジンの「舢板」(「サンパン」)を定期刊行することによって、
ミニ出版社としてスタートし、昨日に引用したように、2000年にはデザイン事務所
の出版部門を独立させて出版社「EDI」としたわけです。
 手もとにある第二期「舢板」第3号に、松本八郎さんは「個人出版半可通史」と
いうことで、「庄司肇とひとり雑誌」なる文章を掲載しています。
もとは、「E+D+P」第45号に寄せたものの転載でありますが、松本さんのテーマが
個人出版」であったことは、あきらかです。
この「庄司肇」さんについての文章には次のようにあります。
「私の興味の関心事は、本業のかたわら小説や評論を書くということではなく、
集まって同人誌を発行することでもなく、商業誌に作品を発表することでもなく、
さらにはそれらを本にまとめることでもない。先に名をあげた人々(医者で作家と
いう人たち)は実際にそうした営みをしておられる。しかし医師であり、作家で
ある人が、他人の作品を自ら出版し、自らの作品を個人誌で、しかも定期的に発表
しつづけている、という例はあまりないだろう。」
 「医師であり、作家である人」でなくとも、「他人の作品を自ら出版し、自らの
作品を個人誌で、しかも定期的に発表しつづけている」なんて話しは、ほとんど
ないことであります。
 97年に「EDIアルヒーフ」の一冊を直接購入したときに、松本八郎さんより礼状を
いただきました。それには以下のように書かれていました。
「作るのに夢中になって、その後冷静になって考えてみますと、どうも詐欺まがいの
ことをしているようです。
 完売して、制作費でプラスマイナス、ゼロとはいえ、文庫本サイズで1500円は
法外な値段です。ここは著者の先生方のご執筆内容並びにご努力に価値を認めていた
だきまして、何卒お許しくださいますようお願い申し上げます。」
 「詐欺まがいのこと」と記しているのが、いかにも自虐的でお気の毒ですが、
これとか、「EDI叢書」のものなどが、後年になってきちんと評価されることが、
松本さんの願いであったのでしょう。