長谷川りん二郎展 6

 長谷川潾二郎さんの回顧展を機に刊行された公式図録は「画文集」となっています。
長谷川さんは、かって探偵小説を書いていたことは知られていましたが、制作をめぐる
文章などは、これまで眼にする機会がありませんでした。
数年前にTV東京「美の巨人たち」で紹介されていた「タローの思い出」も全文が掲載
されています。ほかにも、たくさんの未刊行文章が大量に確認されたようです。
こうして原稿が確認されたということは、どこかの奇特な人が出版してくれないとも
限りません。
 この図録の編集にあたった方は、次のように記しています。
「 長谷川潾二郎は、十代の頃より晩年まで、詩歌や小説、随想や感想、画論、制作
日誌など多くの文章をつづっている。それはノートや原稿用紙、あるいは広告のチラシ
の裏などに書かれて幾度も推敲や改稿を重ね、未定稿のままであることもあり、また、
雑誌等で発表されたものについても、さらに補筆・改訂を加えることも多かった。
ここでは、のこされた手稿のなかから適宜主なものを紹介する。」
 こうした文章のなかで「タローの思い出」は原稿用紙48枚ということで、一番の大物
の一つですが、このほかにも「海路雑信」原稿用紙73枚などというものがあります。
 もともとは画家を志したのですが、先に名前がでたのは探偵小説の作家としてであり
ました。「地味井平造」という筆名ですが、これで残した作品「魔」は、いまでも
次のアンソロジーで読むことができます。

日本探偵小説全集〈11〉名作集1 (創元推理文庫)

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