松山俊太郎さんは、どのくらいの文章を残しているのかわかりませんが、「綺想礼讃」
付録「栞」にある編集者さんによりますと「別巻も含めて全十六冊におよぶ『澁澤龍彦
翻訳全集』の各巻末に付された四百字詰め原稿用紙で千枚を超える(反故になったもの
も含めれば優にその三倍・・・松山氏は原稿用紙を自らの手で一字一字埋めてゆき、
書き直す場合はそのすべてを破棄してしまう)澁澤龍彦が行ったサドの諸著作の翻訳に
ついて徹底的に調査し分析した解題は、本書を補完するものとなっているはずである。」
とありますから、なかなか目に触れにくい形で、たくさん埋もれているのでしょう。
「綺想礼讃」には、澁澤龍彦全集のために寄せた「ねむり姫」「うつろ舟」「高丘
親王航海記」への解題があるのですが、これまたトリビアでありまして、このように
丁寧な仕事をしていたら、全集の刊行を遅滞させるのではないかと心配してしまうほど
であります。
あちこちに寄稿されたものがこれだけまとまっていない文筆家というのも珍しいこと
でありますが、それは松山さんのスタイルが、一般向けではないからでありましょう。
そのことは、松山さんが専門とする分野においても、そうであったのでありましょう。