文学全集と人事 12

 昨日までは「新・文學全集を立ち上げる」という岡崎武志さんと山本善行さんの
作業を話題にしていましたが、これには「新」とあるように、これに先立って
「文学全集をたちあげる」というのが発表されていました。

文学全集を立ちあげる (文春文庫)

文学全集を立ちあげる (文春文庫)

 丸谷才一さんを中心に、鹿島茂さんと三浦雅士さんの三人で、世界文学全集と
日本文学全集の巻立てを検討するものですが、これまでの流れでいきますと、
日本文学全集の二十世紀以降が、どのように検討されているかが興味のあるところ
です。
 その前に、このような検討について、「日本文学全集」に関して、丸谷さんは
検討の冒頭で次のようにいっています。
「 問題は巻数よりも、どういう基準で選ぶかということなんですね。これに
ついては、第一に『いま読んで面白いこと』、それを最大の基準にしたい。
読むに値しないと思ったものは、いくら文学史的に有名でも外す、というのが
一番の枠だと思うんですね。」
 二十世紀以降で百巻となるのですから、これは筑摩の「現代日本文學大系」と
ほぼ同じ巻立となっていますが、それだけ筑摩版全集を意識しているといえるで
しょう。
 「筑摩の現代日本文学全集などでは、一巻にたしか五人なんていうのもある。」
という司会(湯川豊さん)の発言を受け、丸谷さんは、「そういうのはできるだけ
やめよう。せめて三人で一巻。それ以上になるようなら、落としてしまったほうが
いいよ。」と答えています。
 ほとんど営業のこととか、文壇政治に関わらないのでありますから、このような
思いきった構成ができたということでしょう。現実のものでないわけですから、
このくらい元気がなくてはです。
 やはり丸谷さんの発言です。
「 文学全集は出すときに内容見本というのを作って宣伝するでしょう。あれが
花やかで景気がよくてお祭りみないな感じを盛りあげる。今回ぼくたちがやった
のは、内容見本だけの全集ね。」