「本の雑誌」2月号 匿名コラム「大波小波」(東京新聞掲載)の担当記者へのイン
タビュー記事が面白しです。
- 作者: 本の雑誌編集部
- 出版社/メーカー: 本の雑誌社
- 発売日: 2017/01/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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てもらうとして、本日はここから終わりのほうに置かれている発言を引用です。
「書き手にとっては、あまりメリットがないんですよ、『大波小波』。匿名だから、
名前が売れるわけじゃないしその人の実績になるわけじゃない。だからある意味陰徳
を積むような仕事でもある。晩年や亡くなってから全集に収録されるとか、そういう
ケースはありますけどね。丸谷才一を始め、中村光夫、花田清輝、尾崎秀樹、小熊秀
雄、富士正晴などが全集などに入れています。昭和二十年代から三十年代の初めにか
けては、年末に一堂に会して匿名座談会をやったりしてしていたんですよ。そこで
お互いに顔を合わせて『あー、あんたもか』みたいなことはあったらしいですけど」
丸谷才一全集第12巻を確認しますと、匿名時評が40ページ分ほど収録されています。
丸谷の匿名時評については、この「本の雑誌」2月号でも岡崎武志さんが見開き2ペー
ジでエッセイを書いていました。岡崎さんは、他の刊本で読むことができる小説作品
などの収録よりも、「本音をいえばこっち(匿名コラム)を重視して、すべて収録し
て貰いたかった。」と記しています。これはそのとおりでありますね。
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そうです。どうやら、この時期はそうとうにすごいメンバーがそろっていたようで
あります。
ちょうど手元に「大波小波 匿名批評にみる昭和文学史」という小田切秀雄さん
が編集した本の第四巻がありまして、その巻末におかれた小田切秀雄さんの文章を
目にすることができました。
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「昭和30年代の『大波小波』はとくにすぐれた出来まえのものが多く、ユーモアの
きいた風刺があるかと思うと、突き刺すような毒舌が浴びせられる、奇抜な着想の
提案があるかと思うと、楽しいゴシップが出てくる。意地の悪い、しかし小気味の
いい皮肉があるかと思うと、目だたない場所での労作が発掘されて高く評価される。
巧みな、しゃれた言い回しの面白さがあるかと思うと格調をととのえた本格的な評論
ふうのものも現れたりする。『大波小波』がこうして多種多様な工夫をこらし、精彩
に富んでいたのは、もちろん編集にたずさわった人たちの熱意と努力によるものだが、
このコラムの執筆者たちがそれに応えて手をぬかず、力をおとさずにこれらの匿名評
論を書いているからにほかならない。」
小田切さんは、これに続いてこの時期の執筆者として、次の人たちがいたと思われ
ると記しています。
「伊藤整、大岡昇平、高橋義孝、山本健吉、臼井吉見、吉田健一、杉森久英、
埴谷雄高、篠田一士」
篠田一士さんには、「大波小波の五十五年」という文章がありました。