本日の収穫

 編集工房ノア川崎彰彦さんのことを、昨日まで記しておりましたが、本日は
すこし話題を転じて、本日に購入した本について記することにいたします。
 先日に新聞に掲載されていた新刊の広告を見て、これはなんじゃと思ったものが
ありました。いかにも、NHK大河ドラマの便乗企画のように思えたからですが、この
著者は、そのような人ではありません。どういう動機で著すにいたったのか、興味が
わきました。

岩崎彌太郎─「会社」の創造 (講談社現代新書)

岩崎彌太郎─「会社」の創造 (講談社現代新書)

 明治維新の勝ち組といえば薩長土肥と成り上がって政商となる岩崎弥太郎などです
が、こちらは、どちらかというと負け組に属するせいもあって、明治維新に、特に
感慨を抱くこともありません。
 それじゃ地味な小説家の伊井直行さんは、なぜ岩崎弥太郎(この弥太郎という表記
では、ぴったりこないと伊井さんは記しています。)についての新書を書くように
なったのでしょう。
 この新書のあとがきには、次のようにあります。
「私の本業は小説を書くことだ。歴史家ではなく、幕末維新史んじ詳しいわけでもな
い。企業や経営史の研究を行っているのでも、社会史学者でもない。三菱や岩崎家とは
縁もゆかりもない。なぜそんな者が、岩崎弥太郎を題材に、小説でなく新書を書いた
のか、疑問に思われる方がいるだろう。
 元にあるのは、大学卒業後の会社員生活の経験だ。三菱とは較べる土俵にすら乗ら
ない小企業であり、五年半に過ぎなかったのだが、退職後いまに至るまで、強く思い
だされることがある。それは、勤めていたあいだ消えることのなかった違和感である。
会社に従業員として所属することと、私個人であることの関係が自分の中でどうして
もうまく整理できなかったのだ。」
 伊井さんは、もうずいぶんとキャリアの長い小説家でありますが、いくつもの文学
賞をもらっているものの、知名度はいま一つであるようです。これまで新刊がでる
たびに本が見つからずに苦労したのですが、今回はさすがに講談社現代新書の一冊で
ありますので、すぐに購入することができました。これを機に、伊井さんは、すこし
はメジャーな作家になるのでしょうか。