読んでいた本

 ここのところ何日か読んでいた小説です。
 先週に青春18キップの旅を行ったのですが、その時乗り換えの時間待ち合わせを利用
して駅近くの大書店へとむかいました。だいたいこのへんの棚にあるはずと思って見て
みたのですが、うまく見つけることができず、設置されている端末で検索をかけてみま
したら、一冊の在庫があって、それは先ほどチェックした棚にあるということでした。
 本当にあるのだろうか、すでに売れてしまっているのではと思いつつ、棚にむかいま
したら、ほんと一冊がめにつきにくい形でならんでいました。
 その昔であれば、書店の棚の前に立ちましたら、探しているものがむこうから目に
飛び込んできたものですが、最近はすっかり感がにぶってしまって、そこにあるという
のに気がつかないということになりです。まったく衰えたことです。
 その本とは、伊井直行さんひさしぶりの小説「尻尾と心臓」でありました。

尻尾と心臓

尻尾と心臓

 当方にとって伊井直行さんは、新作がでるたびに購入しようと考えている数少ない
作家さんです。小説としては前作「ポケットの中のレワニワ」(2009年、講談社)以来
となります。
 もう何年も前から(というかデビューの頃からというべきか)、伊井さんのテーマの
一つに「会社員小説」というのがあって、それについてここ10年近くもかかっていたこ
ととなります。(  http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20140611 )
 一足さきに論考のほうが完成して、それがでていますが、やっと作品も出来上がった
ことになりです。いくつかの書評では取り上げられているようですが、あまり話題には
なってないのかもしれません。
 今回の小説には入れ子のような親会社と小会社、そして協力会社というものがあって、
そこを足場にしながらも、一つのプロジェクトを推進していこうというチームの動きが
あります。プロジェクトリーダーを中心として、困難な状況を打破しながら、計画を前
に前に進めていくというような枠組みの物語ですが、主人公(というかメインの登場人
物)または、そのパートナーのがどのように動いているかは、書き込まれるものの、
その人たちをヒーローに仕立てるような作り方にはなっておりません。
 あくまでも日本社会のどこにでもある会社組織の企業行動のようなものを描こうとし
ていているように思います。
 当方も勤め人として40年近くも組織に属しておりましたので、ここでのプロジェクト
をめぐるやりとりなどは、けっこうリアルに感じられて、その点でも面白かったので
ありますが、これを読んで一番感じたのは、今年にはいって会社を追われたドンがいた
大手流通グループの組織のことでありました。