本日は野球についての本の話題です。
ずーっと野球はラジオで聞くものでありました。硬式による野球を見るとなると、
身近には社会人野球しかありませんでした。プロ球団が存在しない地域の野球好きに
とっては都市対抗の予選とか社会人野球というのは、人気の高いスポーツイベントで
ありました。最近では、企業が抱える野球チームがばたばたと解散して地域のクラブ
チームのようになりましたので、社会人野球というと企業対抗の趣がすこし薄まった
ように思いますが、一時期は、どうして会社を代表する野球チームの対抗試合が都市
対抗と呼ばれるのかと思いました。都市対抗というのは、野球の本場であるメジャー
リーグのチームが本拠地を置いているまちの名前で呼ばれるのと関係があるように
思います。
プロ野球というのは、大都市圏に企業がスポンサーとなってつくったチームが対抗
試合をするという図式がずっと続いておりましたですね。スポンサーも偏りがあって、
電鉄会社とか新聞社とか映画会社などが球団経営をしていて、野球チームというのは
会社の宣伝媒体のひとつでありました。今でも、この図式はかわっていなくて、野球
のチームを持つことは、会社の器量を示すもので、特にそれを通じてなんらかの役割を
果たそうとしていない親会社があるのは、残念な限りです。
ずっと後発でスタートしたサッカーのリーグ運営が、地域クラブ制をとって、親会社
の影響をできるだけ薄くしようとしているのは、運営の参考としているのが欧州のクラ
ブであるからでしょう。
親会社の宣伝媒体としての役割しか期待されていないとしたら、媒体としての役割が
薄くなってしまうとチームを手放すということもありうることで、それは球界の盟主と
いわれたチームにとっても無縁ではないのかもしれません。
ということで、本日の本です。
南海ホークスがあったころ---野球ファンとパ・リーグの文化史 (河出文庫 な 26-1)
- 作者: 永井良和,橋爪紳也
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/05/01
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 57回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
ありました。関東には、セリーグの読売巨人、国鉄、大洋、パリーグで東映、大毎など
があった時代の話です。
関東にも球団は集中していますが、電鉄系というと国鉄だけで、新聞、映画、水産、
などとスポンサーはわかれているのですが、関西は電鉄会社のみというのが、今では
信じられないことです。
この文庫本の解説は井上章一さんですが、関西のプロ野球のファン事情について、
次のように書いています。
「関西では、阪神ファンが圧倒的な多数をしめていると、今そう書いた。しかし、これ
は比較的新しい現象である。ひところまで、阪神ファンは、そんなにいなかった。私
は、京都の洛西で生まれ、そだっている。阪神のことは、1962(昭和37)年の優勝で、
好きになった。・・1960年初頭の京都には、阪神ファンはそれほどいなかった。少年
たちの多くはジャイアンツびいきであったと思う。テレビが、読売の試合ばかりを放映
していたせいだろう。あと、関西のチームでは、南海ホークスのほうが、人気をよんで
いたはずである。」
いまから40数年前の話しでありますが、「南海ホークス」というのは、大阪の南に
本拠をおいて活動をしていて、パリーグでもっとも人気ある球団であったということを
知る人は、どんどん少なくなっています。
拙ブログで「湯川書房・湯川成一」さんについて記した時、「仙台が親戚」さんに、
湯川さんは熱烈な南海ホークスのファンであったと書き込みをいただきましたが、南海
ホークスについて知りたいと思いましたら、この本にまさるものはないのかもしれま
せん。