湯川共和国12

 塚本邦雄さんによると「湯川版『北の岬』の厚手の凛然醇乎たる局紙の風格をその
まま活かせた造本は、後々の湯川本の性格を決定した。」となります。すこし大判の
厚手和紙に、活版印刷というスタイルは、シリーズのようになっています。
 当方が手にしたのは、加賀乙彦「雨の庭」のみですが、240×170というので、
相当に大きな本です。本文の和紙は、耳をおとしていないので、本の三方が不揃いと
なっています。シンプルな装幀となっていまして、素材の良さを味わうような本と
なっています。
 「雨の庭」は、湯川さんが作成した刊本目録ではNO15となり、72.7.10に刊行です。
( 本の奥付では、 昭和47年6月30日 発行となっています。)
データとしては、限定130部 240×170ミリ 
 かど角革ひら和紙装 和紙装差込函本文 黒谷楮生漉耳付となります。
 なかなか、この本の雰囲気を写真で伝えるのはむずかしいのですが、外箱と表紙を
スキャンしてみましたので、これを以下に掲載します。

 これは外函であります。なんの愛想もなしで、真中よりすこし上に題せんがおかれて
います。

 これは裏表紙です(表も同じです)。背に革が施されていて、そこに書名がおされて
います。
 加賀乙彦さんは長編作家と思っていましたが、加賀さんの短篇をこのように取り上げ
て一冊にしたのは、湯川さんの眼の確かさでしょう。
 「雨の庭」は、09年1月実施の大学入試センター試験の国語問題に、採用されて話題
となりました。