先日に新聞広告にあった作品社「加賀乙彦長篇小説全集」には内容見本を
請求くださいとありましたので、ハガキでお願いをして送っていただきまし
た。最近は、こういう全集のような企画が珍しく、その昔とくらべると内容
見本も目にしなくなっているように思います。
皮肉なことでありまして、全集の端本にはほんとに気の毒になるような値段
で売られているものがありますが、それと比べると内容見本にはびっくりする
ような値段のものがあったりです。(たぶん、一番値段が高いものの一つは
西村賢太さんが作られた藤澤清造全集のものでしょうね。当方も評判は聞いた
ことがありますが、見本を手にしたことはありません。)
ということで、作品社から送っていただいた内容見本を紹介することにです。
やはり加賀乙彦さんというと長篇小説ですよね。この内容見本でご自分で書いて
いますが、「長篇小説を読むことは、飢えを忘れさせてくれるなによりの特効薬」
であります。加賀さんには飢えの体験があり、当方には加賀さんのような体験は
ないのですが、「うまくはまった長篇小説を読むことは、憂さを忘れさせてくれ
るなによりの特効薬」という感じがします。
十九世紀小説でありますが、加賀さんの体験にはトルストイがあり、当方であ
ありましたら、加賀乙彦、辻邦生、北杜夫という人たちの長篇でありましょうか。
(外国でありましたらデュマとかディケンズかな)
最近は、このような十九世紀小説風なものはダサいということで書かれないし、
読まれていないのかもしれませんが、ダサいというも言わないも、まずは読んで
みなくてはです。
当方は加賀さんの代表作である「永遠の都」は新潮文庫で読むことが出来たの
ですが、これはなんとかいまもカタログに残っているようであります。これに
ついで新潮文庫には「雲の都」が入ることを期待したのでありますが、今回の
作品社からの全集刊行によって、文庫化は遠のいたようであります。
全集18巻だそうですが、最終巻の刊行予定は2024年8月だそうです。先の
長い企画ですが、加賀さんも作品社も無事に完走できることを祈っております。