湯川共和国11

 「湯川成一湯川書房ゆかりの美術家たち」展も残すところ、あと三日になりま
した。
 この期間中、拙ブログでは応援のために湯川書房関連の話題を綴ることにしました。
とはいっても、当方に材料は多くあるわけではなく、08年7月から9月にかけての
ところを見直しをしているところです。
 「銀花」14号は73年6月の刊行ですから、「湯川書房」を特集したものとしては、
たぶんもっとも早いものです。この時は、限定本のみを刊行して18冊くらいを刊行した
ところです。ごく限られた人以外は、この特集によって湯川書房のことを知ったはず
です。
この特集には塚本邦雄さんが文章を寄せていますが、そこには、次のようにあります。
「限定本『北の岬』は湯川書房最初の刊行本である。作家は処女作にむかって成長する
という逆説の真理は、書肆の場合も例外ではない。辻邦生に傾倒私淑する湯川書房主人
の初志は、この若書未収録の秀作をえて見事に花開いたといえよう。厚手の凛然醇乎
たる局紙の風格をそのまま活かせた造本は、後々の湯川本の性格を決定した。」
 この辻邦生「北の岬」は、常に湯川書房刊行目録の冒頭に置かれるものですが、それ
の書誌データを、以下に記してみます。
「 限定200部 270×200ミリ 仮綴り装(表紙越前厚口局紙) 和紙装 無双帙
 本文越前別漉き局紙(仏語書名透入) 著者署名(本文紙同)別添付
 印刷 鈴木美術印刷 製本 植田由松    1969.2.28
 *記番1〜20までを、著者、刊行者本とする記載は200部のうち180部を
 頒布するという意で、装幀上に何ら異なるところはない。」

 仙台が親戚様に書き込みをしていただいていますように、印刷者は川井静雄 鈴木美
術印刷となっていまして、これは印刷職人さんの名前を前面にだしたものです。
当時の湯川さんの気分としては、活版印刷の職人さんを、版画の刷り師さんと同じよう
に顕彰しようと思ったのでしょう。