「本の雑誌」8月号が届きました。今回の巻頭特集は「ゴーストライター
の世界へようこそ」であります。
ゴーストライターというのは、著名人にかわって、その方の名前で本を書く
作業をする人であります。タレントさんの本とかスポーツ選手などが書いた
ことになっているものには、ほとんど陰に文章を書く人がいることになりです。
このくらいはあったり前のことであって、別に驚くことでもなんでもありません。
ところが、著名な作家(文章を書くことをなりわいにしている人ですね)の
名前ででたものを、別の人が書いていたとすると、どうでありましょう。
この特集では、そうしたものについても簡単に触れています。
これは小説家とかにゴーストが存在するから話題となるのでありまして、
会社のトップや政治家などの演説とかあいさつをつくるライターがいるのは、
当然のことになっていますが、こちらは著作権などは発生しませんから、まあ
いいのでありましょう。(政治家があいさつなどでライターが書いたものを
読めば失言することはないのでありますが、そうでないときはかなりの頻度で
問題となる発言をするようであります。)
今回の特集で取り上げられているのはゴースト・ライターでありますが、
ゴーストなのか代作なのかでありますね。ミステリー業界では「幽霊が多すぎ
る」というタイトルで新保教授が書いていますので、今はどうかわかりません
が、かってはかなり取り扱いがルーズであったようです。
小谷野敦さんは、「文豪とゴーストライター、または代作」というタイトルで、
興味深い話を書いていました。小谷野さんの書き出しは、次のようになり
です。
「 売れっ子作家にとって、代作はつきものである。現代においても、むしろ
小説家よりは、新書判を量産しているような評論家に、どうしてこんなにたく
さん書けるのか、これはゴーストがいるんだろうな、と思われる人が何人か
いる。」
著作家によっては取材チームを抱えていて、分担して書いて、著者名のみ
を代表となる人で発表している例がありますでしょう。問題となるのは、そう
いうことでやっていながら、それをオープンにしないからでありましょうね。
ゴーストライターが表にでた稀有な実例というと、香月泰男さんの「私の
シベリア」のことを思いだすことです。この本は、香月さんの話を聞き取った
ライターさんがまとめて香月さんの名前で発表したものとなりです。
それから数十年が経過して、このライターさんは有名になって、NHKTVの
ルポで香月さんの足跡を追ってシベリア収容所を訪ねるのですが、そのルポ
をまとめたものと、かって「私のシベリア」として発表したものを一冊にして、
自分名義の本をだすことになりました。
これもこのライターさんがとても有名になったからでありまして、普通は
日陰の存在のままで終わるのでありましょう。