対論 異色昭和史 3

 鶴見俊輔さんと上坂冬子さんという異色の組み合わせからなる対談ですが、これで
みるまで上坂冬子さんが「思想の科学」でデビューしたなんてことを知りませんした。
 鶴見俊輔さんは、日本のエリートを育成するシステムとそれに価値を認める母親に
反発して、いまふうにいうとドロップアウトして、渡米してハーバードに入るという
クロバットを演じるのですが、そうした過程を通じて経験したことが、上坂さんへの
共感へとつながったのでしょう。
 上坂さんが「『原爆ゆるすまじ』なんているスローガンを、わたしはあまり信用して
いません。」という発言を受けて、鶴見さんは、次のようにいっています。
「原爆反対と繰り返しているだけの大学出のインテリに、この状況を知っているのかと
言いたいのでしょう。たしかに日本の知識人って駄目だなあ。私は日本人は駄目だと、
なるべくいわないように注意しているのだけど。
 (上坂さん)あなたは(大学を)でていない。だから信用して付き合いが続いて
いるんだ。・・・
 私は樹木のように成長する思想を信用するんだ。大学出の知識人はだいたいケミカル
コンビネーション。そういう人は人間力に支えられていないから駄目という考えです。
私と接触がある人では、上坂さんにしても佐藤忠男さんにしても、樹木のように成長
しているものを感じるね。文章をみればわかる。」
 鶴見さんのなかには、旧制の中学、高校、大学を卒業した日本の知的なエリートに
対する違和感があったようで、そうしたエリートに支配的であったマルキシズム
対しても同様であったようです。
このことによって、上坂さんは鶴見俊輔さんの近いところにいるようです。