湯川書房 湯川成一の仕事

 昨年7月11日に亡くなった湯川書房主 湯川成一さんについては、その後、
林哲夫さんが編集長をつとめる雑誌「SPIN 04」が「湯川成一さんに捧ぐ」という
特集を組まれました。一般には、入手の容易な雑誌ではありませんが、これに
よって湯川さんの人となりと、限定本の刊本目録を目にすることができるように
なりました。
  生前に湯川さんと親しかった人々による湯川成一さんへのオマージュであり
ますが、湯川書房刊本について知りたいと思う人は、この特集のおかげで、それ
までよりもずっと情報を得る事が容易になったのであります。
 この「SPIN04」の掲載されている文章にもありますが、湯川書房の刊本に
ついての記録は湯川書房主の手元にもないということで、目録をまとめることは、
相当に大変な作業であったようです。( この雑誌に掲載されている山本善行さんの
インタビューは、もともと雑誌「SUMUS」のためになされたものですが、この文章は
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/5180/sumus4.htm 」で読む
事ができます。
 山本さんの「今まで出された本のリストはまったく残っていないのですか?」と
いう質問に答えて、湯川さんは、次のように答えています。
「 何にも記録がないですね。新刊の案内状でもおいとけばよかったんですけどね。
それも全部なくなってしまっている。ひとつも記録が残ってないんです。しまったと
思うときもあるけど、ここまできたら、みな分からんじまいでいこかなと思てるんです。」
 ご本人のなかに、湯川書房刊本の記録をまとめようという考えがなかったわけでは
ないのでしょうが、あるところまではやったけども、それを継続していこうという
気持ちが続かなかったようです。 
 湯川さんの中に、自分がやってきた出版が意味のあるものであったなら、誰かが
刊本についてまとめる人がでるはずという確信でもあったのでありましょうか。