大阪留学の記

 本日の午後1時からNHKFMは、「きょうはとことん大阪三昧」という特集を
やっておりました。お笑いと大阪出身の歌い手さんによる音楽を特集していたの
ですが、これは本日の気分にマッチいたしました。ちょうど、本日に買おうと
思っていた本が「小出楢重随筆集」岩波文庫でありましたので、タイミングは
ぴったりでした。
 小出さんは、先日まで読んでいた「蓼喰ふ虫」の挿絵を描いていた人でありまして、
新年になったら、行きつけの本屋で売れ残って背やけしている「小出楢重随筆集」を
買いましょうと思っていたのでした。
 本日は、大阪三昧でありますので、久本雅美のディスクジョッキーも大阪と、その
周辺とを混同するようなことはなしであります。関西といえば、なんでも同じように
受け止めてしまうといわれますが、もちろん、その地域ごとに言葉と雰囲気はことなる
のでありました。
 ちょうど、いま店頭にならんでいる「サライ」は「文楽」の特集でもありました
ので、それにも手が伸びました。背やけした岩波文庫のとなりには、やはり背やけ
した岩波現代文庫がならんでおりまして、ここにあった山川静夫「綱太夫四季」も
一緒に購入とあいなりました。
「大阪留学」という言葉は、「綱太夫四季」の解説を書いている永六輔さん文に
あった言葉であります。
「昭和30年代に大阪へ行くと、噺家浄瑠璃の人など、いろいろな人から『NHK
に山川君という、若いけれどもなかなかよく芸能をこころ得ている人がいる』という
噂が耳に入ってきました。
 山川さんは、上方にあれ以上の名人上手はいなかったという時代に、劇場の客席に
いたり、放送のスタッフをやっています。僕はそれを東京から見ていて、山川さんは
なんとうらやましい環境の中にいるのだろうと思っていました。
 ところで僕は、・・大阪に『留学』しています。僕は昔から上方芸能が大変なもの
であるということは分かっていて、・・テレビが始まったときに、僕はテレビには
あらゆる芸能が流れ込んでくるダムみたいなものになるぞと思ったんです。だから、
その流れ込んでくるものを確認するために、芸能の源流、大阪に暮らすことに決め
ました。
 大阪留学前に紹介状を書いてもらった中の一人が安藤鶴夫さんです。安藤さんも
東京の人で、上方の芸能に惚れ込んでいました。」
 山川さんは、学生時代から歌舞伎通として有名な存在であったとか聞いたことが
ありました。NHKに入って大阪勤務となったのは、望むところであったのでしょう。
スポーツの実況中継をするために、スケート中継なら北海道勤務とならなくてはと
いう時代もありました。仕事のためであったも学ぶために移り住むというのは、
留学といってもいいのでありますかな。