おかしな時代

 やっと津野海太郎さんの「おかしな時代」を手にすることができました。
本の雑誌」連載中にも、拙ブログで何度が話題にしたことがありましたが、こうして
単行本となったのを機に、あらためて読み返しています。連載は4年にも及んでいます
ので、最初の頃のことは、ほとんど忘れています。小生にとっての津野海太郎さんは、
どこまでも編集者でありまして、演劇運動への関わりについてはよくわかっては
いませんでした。あらためて読んでいるのですが、最初は演劇人としてたっていこうと
考えていたことが伝わってきました。
 まだ半分ほどしか読み進んでいませんが、それにしても若くしてなくなった人、
志半ばで亡くなった人が多いことか。
 演劇関係でいくと一番最初の章に登場する「中学以来の親しい友人」草間暉雄さん、
急激な腎臓炎の悪化のために倒れたのは、自らが書いた芝居の練習中のことで公演が
終わってまもなく、25歳という若さでありました。この方の遺稿集をまとめると
いうことで、作業を行っていたときにであったのが新進気鋭のデザイナー平野甲賀さん
であり、二人で作った遺稿集の書影が、この本に掲載されています。
 親しくつきあった俳優でも、まだまだこれからという時に、亡くなった人が登場
します。それは、草野大悟さんであり、岸田森さんです。この二人ともが、まだまだ
これからという時に亡くなっていて、回想するというのは、すでになくなった人や
事象を後世に伝えていくものであるということがわかるのでありました。
 津野海太郎さんは、この回想録を65歳から書きはじめたということですが、あまり
遅くなってから書き始めると、記憶がはっきりとしなくてなって、資料価値が落ちると
いうことがあるようです。
 回想録を記するのに、遅すぎることはないということでありますか。