岩波新書創刊70年記念

 今月に届いた「図書」は、臨時増刊がついておりまして、それには「私のすすめる
岩波新書」とありました。岩波新書創刊されて70年記念してのものですが、各界
218人の方々にアンケートをした結果が掲載されています。
 今回のアンケートで一番多くあがったのは、「日本の思想」でありまして、これは
前回、60年記念の時と同じようですが、前回になくて、今回に登場するものに、
「バナナと日本人」鶴見良行さんがあります。いきなり2番目となる推薦数を獲得
したというのですが、これはまったく意外な結果でありまして、鶴見良行さんが
訴えていたことが、この10年になって時代に受け入れられるようになったという
ことでしょうか。( それとも、ルポルタージュとかノンフィクションライターの
人たちが、10年前よりもメジャーとなって、アンケートの回答者に多く起用されて
いるということでしょうか。)

 「バナナと日本人」をあげている、代表的な一人は「鎌田慧」さん。
鶴見良行さんのロングセラーだが、ひとつの商品の生産状況にこだわることに
よって、自分の生活と世界の状況との関係が次第に明らかになっていく。いまや
世界認識の古典的な教科書であり、ルポルタージュの方法の入門書である。」
 どちらかというと、この回答者のなかでは若手(?)と思われる永江朗さんは、
次のようにコメントしています。
「バナナが大好きな私は、この本によって、自分の口と第三世界の農民とか
どのようにつながっているかを知った。バナナ一本から世界のしくみが見えてくる。」
 「エビと日本人」という新書があがっていましたが、これの著者である村井吉敬さんは、
「わたし自身による新書『エビと日本人』を書くきっかけとなりお手本にした本である。」
 政治学者である「篠原一」さんのような大御所もあげています。
宮崎義一さんから多国籍企業の生態についてはつとに学んでいたが、この本はグローバ
リズムのえげつなさをはじめて具体的に教えてくれた。」

 このほかにもあげているひとがいましたが、「バナナと日本人」は82年刊であり
ます。しばらく話題にもならずにいた「バナナ」でありますが、先月には「朝バナナ
ダイエット」とかが喧伝されて、しばらくは「バナナパニック」ともいうような現象が
おこりました。
 73年のオイルショックの時には「トイレットペーパー」の買いだめというのが
社会現象となりましたが、それから35年となって、この秋の「バナナ」騒動です。
我々のメンタリティにおいては、その当時となんらかわるところがなしで、ダイエットで
右往左往するのではなく、もっとグローバリズムの弊害をこそ学ばなくてはいけないようで
あります。